「ローマ帝国?ローマ皇帝ヴァレリアヌスは、ペルシャ王シャープール一世に大敗し、捕虜となった筈だ。ローマ帝国は、イランには存在しない」 クラッキオーロが、バリーの言葉を返す。二人は、トンネルの中を走り出した。 「お前、博識だな。だが、歴史とは光の当たる部分のみを、記録しているに過ぎない。この水路も、歴史の闇に葬られた”真実”の一部だ」 「まさか・・・」 「その、まさかだ。現実に、こうやって水路が存在している」 少し走った所に、数台の軍用バイクが停まっていた。彼らはそれにまたがり、それぞれに列をなして走り出した。 バリーも、その一台にまたがる。 「後ろに乗れ!」 クラッキオーロが、タンデムシートに乗った。 「アンタ一体、何者なんだ!?」 「さっきも言っただろう。俺は、タダのビジネスマンさ!」
トンネルを抜けると、砂漠の地平線に朝日が昇り始めていた。砂丘をのぼった所に、一台のトラックと、二台のジープが停まっている。 クルーエルたちは、トラックにバイクを積み込み、モラレスの死体を乗せた。 「さあ、教えてくれ。この事件の真相を!」 クラッキオーロの言葉に、バリーが振り返る。 「教えてやる。だが、覚悟しろよ。お前は既に、歴史の”闇”に踏み込んでいるんだ」 そう言うと、バリーは彼に”真実”を語り始めた。
イランに核が持ち込まれ、その情報を一早く掴んだ男がいた。彼の名は、CIAのマイケル・モラレス。 そのモラレスを、テヘランのアメリカ大使館から救出して欲しいと依頼したのは、”聖統合教会”というヴェールを被る、チェ・ジュンス神父。彼はKCIA(韓国中央情報局)のエージェントである。 「何故、KCIAが動く?」 クラッキオーロがバリーに問いかけた。 「核は、ソ連から北朝鮮を経由して、イランに運び込まれた。少なくとも、北朝鮮が関わる以上、KCIAが国家安全保障の面で首を突っ込むのは、当然のことだ。だが、アメリカはモラレスを見放したんだ。それどころか、今回の作戦の最大の目的は、モラレスの暗殺だ」 「このイーグル・クロー作戦は、大使館の人質救出を目的としている筈だ・・・」 バリーは煙草をくわえ、火を点ける。 「アメリカは、何故モラレスを狙ったのか・・・。イランに核が持ち込まれたのではなく、モラレスがKCIAのチェ・ジュンスと結託し、ソ連から核を”持ち込ませた”からだ」 バリーの言葉に、クラッキオーロを始め、その場に居たタウバー・ファームのメンバーが、息を呑んだ。 「どういう意味だ・・・?アメリカが韓国と組んで、ソ連から核を持ち込ませたというのか?」 バリーは、静かに頷いた。 「信じられん・・・」 「イスラム教徒の学生たちが、アメリカ大使館を占拠した目的は、モラレスを探し出し、持ち込まれた核を捜す為だった」
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