陽が暮れ始めたエルサレムの街に出ると、バリーはすぐに、その気配に気付いた。 自分を、何者かが尾行している。 バリーは、わざと歩を緩め、観光客の中に紛れた。その一行は、バザーの中に入った。 人々で賑わうバザーで、一度その歩を止める。雑踏の中で、尾行していた者たちが、同じように止まった。彼らの気配が、手に取るように分かる。 バリーは口元に笑みを浮かべながら、裏路地へ滑り込む。尾行していた者たちも、慌てて後に続いた。 だが、その姿は無い。尾行していた男たちは、バリーの気配を探ろうとして、裏路地の更に奥へ進んだ。 男たちは左右を確認しながら、ジャケットから銃を取り出し、バリーの姿を捜した。一人が指示を出し、もう一人が表通りへ向かう。残った男は、そのまま裏通りを進んだ。 男は銃を構えたまま、人の気配が無い細い石畳の裏通りを進み、目の前に突き当りが見えた瞬間、男の後頭部に、何かが突きつけられた。 それが銃口だと悟った男の額から、冷たい汗が流れる。 「お前、俺を捜しているのか?」 男は、ゆっくりと背後を振り返った。 通りから忽然と姿を消した、バリーがそこに立っていた。 男が、ふとバリーの背後を見る。バリーはそれを見逃さなかった。 相手の”気”を読み、振り向きざまにバリーは己の背後で銃を向けていた、もう一人の男の腕を振り払い、その顎を掴んで前に押し出した。 その技で、男の身体が吹っ飛ぶ。 バリーが背後を見せたのを好期と考えた男は、その隙に構えていた銃のトリガーを引こうとしたが、バリーの蹴りが入り、握っていた銃が飛んだ。 「無駄だ。俺には、一寸先が見える」
その部屋のドアが、何の前触れも無く蹴破られた。 それに驚いた部屋にいた男たちが、テーブルから立ち上がる。 「さぁ、俺を尾けてきた理由を教えてもらおうか」 そこに立っていたのは、尾行に着けさせた二人の男と、彼らに銃口を向けるバリーだった。 その物音で、奥から一人の男がゆっくりと前に出る。 「貴方を尾けさせたのは、私です。ミスター・タウバー・・・」 そう言うと、男は不敵な笑みを浮かべた。 「やはり、アンタだったのか。チェ・ジュンス神父・・・」
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