メモを一読し、バリーはウエイターの眼を見る。ウエイターは、小さく頷いた。 「下がって、いい」 バリーの指示で、ウエイターが部屋を出た。彼は、デボアのケース・オフィサーである。 ウエイターに手渡されたメモは、会談に出席したアロン・バージェスと、”聖統合教会”の宣教師、チェ・ジュンスの経歴だった。 アロン・バージェスは、イスラエル首相、ベン・ナサニエルが経営する武器製造会社「サンクティ・テルム」のCEOであり、ナサニエルの従兄弟であった。 チェ・ジュンスは”聖統合教会”のアメリカ、ワシントン支部の支局長であり、同支部が経営する新聞紙「ワシントン・ジャーナル」の社主である。 そして教祖、ムン・ヨンテクの右腕であった。 しかし、チェ・ジュンスが一瞬にして見せたあの”殺気”は、タダの一宗教家では出せないものだ。
もう一度、あの男に会う必要がある。 そう考えたバリーは、時を待った。
一時間後、大音量の「ソルト・ピーナッツ」が流れるバリーのペントハウスから、ルームサービスのワゴンが出てきた。 ワゴンを押すウエイターは、バックヤードに入る。そこで待っていたのは、音響設備の前でヘッドフォンを着け、バリーのペントハウスの音をモニターする男と、グルダ少尉が立っている。 「待て」 グルダはウエイターを呼び止めると、ワゴンの上に乗っていた皿を確認した。 「よし、行っていいぞ」 グルダに従い、ウエイターはバックに入り、搬入用エレベーターに乗り込んだ。
バリーのペントハウスをモニターしていた男は、その”音”を聞き漏らさなかった。 「おい、大変だ!」 その声に、グルダが振り返る。 「どうした?」 男は、グルダにヘッドフォンを手渡した。それを聞いた彼は、思わず吐露する。 「しまった・・・!」 ヘッドフォンからは、レコードで流していた「ソルト・ピーナッツ」の最後の小節が、”飛んで”いる音が流れていた。
ルームサービス用ワゴンの下から、膝を屈し、両肩を外したバリーが現れた。彼は顔を歪ませながら、外した左右の肩を入れる。 「大丈夫ですか?」 ウエイターに扮した、デボアのオフィサーが訊ねた。 「問題ない」 そう言うと、バリーは手にしていた白いジャケットを羽織り、サングラスをかける。 「後は、頼む」 バリーの言葉に、オフィサーは頷いた。
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