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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第232回   232
メモを一読し、バリーはウエイターの眼を見る。ウエイターは、小さく頷いた。
「下がって、いい」
バリーの指示で、ウエイターが部屋を出た。彼は、デボアのケース・オフィサーである。
ウエイターに手渡されたメモは、会談に出席したアロン・バージェスと、”聖統合教会”の宣教師、チェ・ジュンスの経歴だった。
アロン・バージェスは、イスラエル首相、ベン・ナサニエルが経営する武器製造会社「サンクティ・テルム」のCEOであり、ナサニエルの従兄弟であった。
チェ・ジュンスは”聖統合教会”のアメリカ、ワシントン支部の支局長であり、同支部が経営する新聞紙「ワシントン・ジャーナル」の社主である。
そして教祖、ムン・ヨンテクの右腕であった。
しかし、チェ・ジュンスが一瞬にして見せたあの”殺気”は、タダの一宗教家では出せないものだ。

もう一度、あの男に会う必要がある。
そう考えたバリーは、時を待った。

一時間後、大音量の「ソルト・ピーナッツ」が流れるバリーのペントハウスから、ルームサービスのワゴンが出てきた。
ワゴンを押すウエイターは、バックヤードに入る。そこで待っていたのは、音響設備の前でヘッドフォンを着け、バリーのペントハウスの音をモニターする男と、グルダ少尉が立っている。
「待て」
グルダはウエイターを呼び止めると、ワゴンの上に乗っていた皿を確認した。
「よし、行っていいぞ」
グルダに従い、ウエイターはバックに入り、搬入用エレベーターに乗り込んだ。

バリーのペントハウスをモニターしていた男は、その”音”を聞き漏らさなかった。
「おい、大変だ!」
その声に、グルダが振り返る。
「どうした?」
男は、グルダにヘッドフォンを手渡した。それを聞いた彼は、思わず吐露する。
「しまった・・・!」
ヘッドフォンからは、レコードで流していた「ソルト・ピーナッツ」の最後の小節が、”飛んで”いる音が流れていた。

ルームサービス用ワゴンの下から、膝を屈し、両肩を外したバリーが現れた。彼は顔を歪ませながら、外した左右の肩を入れる。
「大丈夫ですか?」
ウエイターに扮した、デボアのオフィサーが訊ねた。
「問題ない」
そう言うと、バリーは手にしていた白いジャケットを羽織り、サングラスをかける。
「後は、頼む」
バリーの言葉に、オフィサーは頷いた。


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