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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第226回   226
あれほどの規模で、一度に値を吊り上げるとなると、必ずターナーはそれを嗅ぎ付ける筈であった。それを秘密裏に成功させるとなると、この男の背後には強大な組織が動いていた事になる。
「お前の背後にいる組織は、何だ?」
サラディンがバリーの顔を見た。何も恐れない、自信に満ちた、精悍な面構えをしている。
「私、一人だけです」
「そんな筈は無い!」
サラディンは声を荒げた。
「このターナーが、400億ドルという巨額な損失を出したのだ。それほどの荒業を、お前一人で成し遂げられる規模では無い!」
その言葉を聞くと、バリーは視線を上に向け、何かを思い浮かべた。
「確かに、多少は奔走しましたがね・・・。だが、私一人だけですよ」
その口元に笑みを浮かべる。彼の動じない表情に、サラディンは困惑していた。
「分かった。仮にお前一人で、やったとしよう。では、何故お前がここに居るのだ?お前の目的は、何だ?」
バリーは胸ポケットに手を入れた瞬間、サラディンの隣に立っていた秘書が、背広から銃を取り出し、それを彼に向けた。
「やめてくれ。煙草が、吸いたいだけだ」
そう言うと、サラディンは秘書に銃を納めさせた。それを見たバリーは、銀のシガーケースを取り出し、煙草をくわえ、テーブルの上にあったライターで火を点けた。大きく吸い込み、待ち構えたように煙を愉しんだ。
「私の目的は、貴方とビジネスをしたいだけです」
「ビジネス?」
「貴方は、”新参者”とは一切仕事をしないと聞きました。こうでもしなければ、恐らくお会いすることも、出来無かったでしょう」
サラディンは、もう一度バリーの眼を見た。猜疑心の強い彼は、全く他人を信用していなかった。唯一、ビジネス上信頼できる男が、バリーの背後にいるヘイデン・ターナーだったのだ。そのターナーを一瞬にして追い落としたのが、目の前に立っている男だった。
「面白い男だ・・・」
そう言うと、ヒュミドールから葉巻を取り出し、くわえた。それを隣に立っていた秘書が、火を点ける。ソファに腰掛け、バリーとターナーにも座るように勧めた。
「分かった。お前の話を聞こう。ただし、内容によっては、お前をこの部屋の外に突き落とし、あの世へ行ってもらうことになるぞ」
「充分、貴方が満足する話です」
そう返すと、バリーの口元から笑みが消えた。
「昨年11月にイランで起こった、アメリカ大使館人質事件についてです」
「ホメイニを師事する、学生たちが起こした事件だな」
バリーは、小さく頷いた。
「アメリカは、人質解放のために交渉を続けています。そのための交換条件として、彼らから要求されたのは、アメリカが持つ最新鋭の武器・・・」
”武器”という言葉に、サラディンの眼が光った。それを見逃さなかったバリーは、話を続けた。
「決して屈しない”強きアメリカ”が、その”要求”を呑む決心をしたのです」
「何だと!?」
サラディンは、眼を丸くさせた。


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