その日から一週間後、ワシントンDCに居るジョージ・スピラーンの元に、ある物が入った封筒が、届けられた。
ジョージが担当していた殺人事件が解決し、テキサスから戻った時のことであった。 彼は、妻のアンジェリアと暮らしていた家を売り払い、マンションに独りで住んでいた。
ドアを開け、部屋の灯りを点けた。 ネクタイを緩め、荷物を無造作に、寝室のベッドの上に放り投げる。キッチンへ行き、冷蔵庫を開けると、ビールを取り出し、口へ流し込んだ。 ジャケットを脱ぎ、出張の間、溜まった郵便物を確認する。 その中で、差出人も宛名も何も無い、何かが入った封筒があった。ジョージは封筒を揺らし、灯りに翳す。 中身は金属のかけらのような物だろうか。そう思いながら、手で封を切り、中身を出した。 「これは・・・」 思わず、声に出した。 「父さんの、ロザリオだ・・・!」 銀の十字に、真中に緑の翡翠が埋め込まれているロザリオだった。 「どうしてこれが・・・!」 幼い頃に、父親のシネイド・スピラーンが首からかけていたロザリオであった。父親が死んでから、どこかへ行ってしまった物だと思っていた。 だが彼は、即座にそれが誰から送られてきた物なのかを、悟った。 「バリー・・・」 三年前、シカゴでバリーの経営する、食品輸入商社の事務所が爆発炎上し、焼け跡から一人の焼死体が見つかった。 だが照合の結果、その焼死体はバリーでは無かった。 それどころか、その爆発事故を担当したシカゴ市警の刑事・アダムスが捜査中に背後から撃たれ、殉職。 その翌日には、バリーとされた焼死体を検死した、検視官・ソローが運転中にトラックと正面衝突し、即死。二人の死は、いずれも事件性は無いとされる。その上、あの焼死体はバリー・タウバーで無いと確認されたにも関わらず、バリーは登録上”死亡”となった。 ジョージは引き続き、バリーが何かの事件に巻き込まれた可能性があるとし、捜査を続けていたが、彼の上司から、捜査を打ち切れと命令を受ける。 バリーの事務所が爆発し、担当した刑事と検視官の死までもが、全て”事故”として片付けられた。 ジョージは、そのロザリオを握り締めた。 バリーは、やはり生きている。 彼は、何かに巻き込まれたのか、それとも、自らの意思で”深淵”に入り込んでいったのか。恐らく、それは後者の方だろう。 ジョージはテーブルから立ち上がると、脱ぎ捨てたジャケットを羽織り、部屋を出た。彼は、もう一度シカゴへ向かった。 「徹底的に、もう一度洗いなおしてやる!」
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