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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第220回   220
俯いたガーツの表情を見たバリーは、その口に、不敵な笑みを浮かべた。
「そう、気落ちすることではない。人質奪還の為には、その方法が”セオリー”だ。それに、予算や人員の配分を考慮すると、その”作戦”は妥当だろうな」
ガーツは、バリーが話す内容を、十分に理解していた。彼は、バリーの次の言葉を待った。
「この”作戦”は、俺に任せないか?」
バリーの、この言葉を、ガーツは待っていた。だが、彼は表情を崩さなかった。
「俺に任せてくれたら、ただ”渡す”だけでなく、”それ”を金に換えてやる」
ガーツは、もう一度腕を組んだ。この男に依頼するメリットは、十二分にあった。今のCIAには、この作戦を遂行できる人材が、皆無なのだ。
そして、もしもの時は、完全にこの男を切り捨てれば良い・・・。
「分かった・・・。お前に、任せよう。成功すれば、お前の用件も受け入れる」
「それと、俺の手数料は、売り上げの20%だ」
「値上げしたのか?」
「これだけ、中東が混乱しているんだ。20%は、妥当な線だ」
ガーツは、苦笑を浮かべた。
「分かった。20%を、呑もう」
その答えを聞くと、バリーは満足げな笑みを浮かべ、吸っていた煙草を、灰皿に押し付ける。
「ところで、ヘイズは何をやってるんだ?」
そう言いながら、銀のシガレットケースから、新しい煙草を取り出し、くわえた。
「奴は、”東”に潜っている。気になるのか?」
ガーツの言葉に、バリーは小さく頷いた。
「そういえば、奴はお前の妹を殺したんだったな・・・」
バリーの透き通った水色の眼から、彼の真意を読み取ろうとしたが、冷徹な瞳からは、何も分からなかった。
「復讐したいのか?」
「いや、奴はイカれてるが、使える男だ。アンタが奴を使わないなら、俺が引き抜こうと思ったまでだ・・・」
それを聞いたガーツが、声を上げて笑った。
「お前は、憎しみよりもビジネスが、好きだと言っていたな!」
「復讐するなら、とうに奴を八つ裂きにしている。憎しみよりも、”世界”を相手に、金儲けの方が愉しくてな・・・」
そう言うと、バリーは悪魔のような笑みを浮かべた。
「まさに、”死の商人”か・・・」
だが、ガーツには何かが気に入らなかった。
ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブの存在を否定し、FBIに命を狙われた。

バリー・タウバーは、何かを隠している。この男の目的は、一体何なのか?
その疑念を、拭い去ることが出来なかった。

「一つ、聞かせてくれ」
ガーツが、口を開いた。
「フェッズ(FBI)に狙われたと言っていたが、確かお前の幼馴染は、フェッズの特別捜査官では無かったのか?」


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