雨が降り始めた夕方、134号線ハンプトン・ハイウェイを西に行くと、ハーキュリーズ・アベニューの手前に、バリーが電話をかけてきた、24時間営業の、ぺセル・マナー・ダイナーがあった。 ガーツはダイナーの前で車を停めると、コートの襟を立て、降りしきる雨をよけながら店に駆け込んだ。 閑散とした店に入ると、窓際の席に一人の男が座っている。ガーツはコートに付いた雨雫を手で払うと、男の向かいに座った。 「早かったな」 その男・バリーはガーツを見上げ、煙草の煙を吐いた。ガーツは、彼の眼を見据えながら、腰掛ける。 「本当に、生きていたとは・・・」 「見ろよ。ちゃんと、足は付いてる」 バリーは、そう言うと片足を上げた。その姿を見たガーツは、苦笑する。 「しかし、久々にアメリカのコーヒーを飲んだが、クソが付くほど不味いな」 手元にあったコーヒーを飲み干すと、バリーはカウンターにいたウエイターを呼び、コーヒーのおかわりを催促した。 「ここのコーヒーは、不味くて有名な店なんだ」 ガーツが応える。その隣で、ウエイターが二人を睨みながら、バリーのカップにコーヒーを注いだ。 「で、俺に頼みとは何だ?」 ガーツの言葉に、バリーは口にしていたカップを置くと、ネクタイを緩めた。 「もう一度、アメリカに拠点を置きたい」 バリーの答えに、ガーツはその意味を理解した。彼は、登録上死亡のままだったからだ。 「確かに、未だにお前は死んだままだからな。死亡していたのが、生きていたのであれば、行政に行けば何とかなる」 しかし、国の手続きを取って復活となると、バリーにとって不都合が生じる。 「誰に、狙われたんだ?」 ガーツの言葉に、バリーは聞かなかったフリをした。もう一度同じことを言うと、バリーはガーツの眼を見た。 「フェッズ(FBI)さ」 「フェッズ?何故FBIが、お前の命を狙うんだ?」 部下のシンディ・ハスラムからの報告では、一度何者かに拉致されかけたとの報告を受けていたが、それが何者かまでは、掴めていなかった。 「さあな。奴ら、ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブの居所を教えろと、凄い剣幕でまくし立ててきたんだ」 輸出に関して、逮捕をするなら分かるが、彼らは名乗りもせず、最初から脅してきたと、話を続けた。 「何故、そいつらがフェッズと分かったんだ?」 「簡単だ。奴らのIDをスッたんだ」 バリーの答えに、ガーツが笑った。 「だから、俺に頼む訳か」 「まともに復帰したら、奴らまた俺を殺しに来る。そんな奴らを相手にしてたら、仕事が成り立たないからな」 ガーツは煙草を取り出すと、一本くわえ、火を点けた。 「勿論、タダでとは言わん」 同じように、バリーも煙草をくわえる。 「アンタの”頼み”ぐらいは、遂行できる力は持ってる・・・」 ガーツは、何も言わなかった。ただ、バリーの言葉を待った。彼もそれに気付き、話を続ける。 「レバノンでの内戦、激化しているようだな」 バリーの言葉に、ガーツは彼に視線を合わせた。
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