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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第218回   218
雨が降り始めた夕方、134号線ハンプトン・ハイウェイを西に行くと、ハーキュリーズ・アベニューの手前に、バリーが電話をかけてきた、24時間営業の、ぺセル・マナー・ダイナーがあった。
ガーツはダイナーの前で車を停めると、コートの襟を立て、降りしきる雨をよけながら店に駆け込んだ。
閑散とした店に入ると、窓際の席に一人の男が座っている。ガーツはコートに付いた雨雫を手で払うと、男の向かいに座った。
「早かったな」
その男・バリーはガーツを見上げ、煙草の煙を吐いた。ガーツは、彼の眼を見据えながら、腰掛ける。
「本当に、生きていたとは・・・」
「見ろよ。ちゃんと、足は付いてる」
バリーは、そう言うと片足を上げた。その姿を見たガーツは、苦笑する。
「しかし、久々にアメリカのコーヒーを飲んだが、クソが付くほど不味いな」
手元にあったコーヒーを飲み干すと、バリーはカウンターにいたウエイターを呼び、コーヒーのおかわりを催促した。
「ここのコーヒーは、不味くて有名な店なんだ」
ガーツが応える。その隣で、ウエイターが二人を睨みながら、バリーのカップにコーヒーを注いだ。
「で、俺に頼みとは何だ?」
ガーツの言葉に、バリーは口にしていたカップを置くと、ネクタイを緩めた。
「もう一度、アメリカに拠点を置きたい」
バリーの答えに、ガーツはその意味を理解した。彼は、登録上死亡のままだったからだ。
「確かに、未だにお前は死んだままだからな。死亡していたのが、生きていたのであれば、行政に行けば何とかなる」
しかし、国の手続きを取って復活となると、バリーにとって不都合が生じる。
「誰に、狙われたんだ?」
ガーツの言葉に、バリーは聞かなかったフリをした。もう一度同じことを言うと、バリーはガーツの眼を見た。
「フェッズ(FBI)さ」
「フェッズ?何故FBIが、お前の命を狙うんだ?」
部下のシンディ・ハスラムからの報告では、一度何者かに拉致されかけたとの報告を受けていたが、それが何者かまでは、掴めていなかった。
「さあな。奴ら、ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブの居所を教えろと、凄い剣幕でまくし立ててきたんだ」
輸出に関して、逮捕をするなら分かるが、彼らは名乗りもせず、最初から脅してきたと、話を続けた。
「何故、そいつらがフェッズと分かったんだ?」
「簡単だ。奴らのIDをスッたんだ」
バリーの答えに、ガーツが笑った。
「だから、俺に頼む訳か」
「まともに復帰したら、奴らまた俺を殺しに来る。そんな奴らを相手にしてたら、仕事が成り立たないからな」
ガーツは煙草を取り出すと、一本くわえ、火を点けた。
「勿論、タダでとは言わん」
同じように、バリーも煙草をくわえる。
「アンタの”頼み”ぐらいは、遂行できる力は持ってる・・・」
ガーツは、何も言わなかった。ただ、バリーの言葉を待った。彼もそれに気付き、話を続ける。
「レバノンでの内戦、激化しているようだな」
バリーの言葉に、ガーツは彼に視線を合わせた。


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