「バリー、待って」 その声に、バリーは足を止めた。振り返ると、サラが首に腕をまわし、彼の唇をふさいだ。 バリーはそれに応え、彼女の背を抱き寄せる。サラの身体からは、成熟された女の匂いがした。 「ここで貴方が死んだら、私が来世で、貴方を殺すわよ」 サラの辛辣な冗談に、バリーの口角が上がった。 「相変わらず、口の悪い女だ・・・」 もう一度口づけを交わすと、バリーは踵を返し、村の奥へ走った。
村長の家の前には、二台の軍用ジープが停まっている。そこに二人の見張りと、家の前に一人の兵が立っていた。 バリーは暗闇に乗じて、気配を消しながら前に進んだ。軍用ジープに隠れながら、二人の見張りの間を掻い潜り、村長の家の塀に張り付いた。そっと顔を上げ、中の様子を窺う。家の扉に一人、家の周りを歩く兵が一人いる。窓から漏れる灯りには、一人の兵が見えた。 家の周りを歩く兵士が通り過ぎたあと、そっと塀の中に入る。背後から、兵士の首に腕をまわし、彼の右腕をひねり上げた。 「村長は、どこだ?」 スペイン語で、兵士の耳元で囁く。兵士は息が出来ない苦しさで、もがいた。 「言え・・・!」 「裏の、納屋に・・・」 兵士が応えると、バリーは腕を固め、兵士を気絶させた。足早に裏へ回ると、納屋の前にも一人の兵士が立っている。バリーは壁に身を潜め、石を投げた。それに気付き、見張りに立っていた兵士は、警戒しながらバリーが隠れている壁に近付く。 兵士が転がった石に気を取られた隙に、バリーは兵士の背後から首を掴んで、へし折った。兵士の腰に着けていた鍵を取り出し、納屋の扉を開けた。 納屋の中には、乾燥されたとうもろこしや、小麦が山積みにされていた。その足元に、四人の男が、手足を縛られ、口をふさがれ倒れている。その一人の口のテープをはがし、手足の縄を切った。 「ここの村長か?」 バリーはスペイン語で、その男に問いかける。それに男が頷く。 「君は、誰だ?」 「FSLNのホルヘ・パストラに依頼を受けてきた。説明は、あとだ。今は、ここを出よう」 そう言うと、他の男の縄を解いた。 「生き残りは、これだけなのか?」 バリーが言った。 「他は、皆殺された。女子供も、構わずだ」 村長が応えた。バリーは村長の肩を掴む。 「残念だ・・・」
バリーと村長を含む四人は、家の正面へ回った。すると、家の正面に立っていた兵士の姿が消えていた。 「気付かれたか!」 バリーの身体に、更なる緊張の糸が張り詰める。そして鋭敏な神経が、ジープの前に立っている兵士たちの気配を感じ取った。 「そこまでだ!」
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