周囲を高い木の塀で囲われている、村の入り口のそばにあった家屋の影に隠れ、二人の守衛の近くに来た。バリーは辺りを見渡し、低くなっている塀を見つけると、サラに「ここで待て」と手で合図をした。 その塀を乗り越え、中に入る。周囲に何も無いことを確認し、バリーはサラを呼んだ。その合図に応え、彼女も中に入る。 バリーは目の前にある家屋の中にも、神経を尖らせた。だが、そこからは全く人間の“気配”が無かった。ここの住人は、やはり先ほどの断崖で、銃殺されたのだろう。 更に村の奥にある、軍用ジープの元へ行くため、バリーとサラは腰を低く屈めながら、塀の影を利用した。 村の中央を見ると、二人の兵士が立っている。彼らは、何かを言いながら足元に在るものを蹴り続けていた。バリーとサラは、塀から頭を少しだけ上げ、様子を窺う。 “それ”に、サラの身体が反応するが、バリーは彼女を制止させると、手で「動くな」と合図した。サラはそれに従う。 兵士が蹴っていたもの。“それ”は、まだ幼い少年だった。 バリーは、兵士が少年に言っている、スペイン語を聞き取る。彼らは、「村の住民」「生き残り」と言っていた。 バリーはナイフを手にすると、気配を完全に消しながら、塀から出る。 兵士の一人が、AK47の銃口を、少年の頭に向けた。 その瞬間、バリーには全てのものが、スローモーションに見えた。 手にしていたナイフを、少年に銃を向けていた兵士の首に投げる。ナイフは兵士の首に刺さり、彼は振り返りながら倒れた。隣にいた兵士が、AK47を向けると同時に、バリーは兵士の懐深くに入り込み、身体を回転させ兵士を倒し、その流れのまま、首の骨を折った。立ち上がり、まだ息のあった、もう一人の兵士の首に刺さったナイフを抜くと、首の頚動脈を切ってとどめを刺した。 バリーは倒れていた少年に、手を差し伸べた。 「デ・アクエルド(大丈夫)?」 頭から血を流していた彼は、頷きながらバリーの顔を見上げる。彼はバリーの手を握り、スペイン語で応えた。 「どうやって、倒したの?」 「あとで、教えてやる」 バリーは、幼い少年を抱き上げると、サラに手招きをする。彼女は腰を屈めながら、バリーと少年の元に走ってきた。バリーは彼女に少年を預けると、倒した二人を物陰に隠した。 「大変よ」 少年を抱き上げていたサラは、バリーに耳打ちをした。 ベルドゥーラ村の生き残りが、まだ存在していると、少年が言ったのだった。 「生き残りは、どこにいるんだ?」 「村の奥にある、村長の家らしいわ」 村長と、その家族が捕らわれている。その近くに、軍用ジープがあった。バリーはサラと、その少年を、そばにあった家の塀の中に連れて行く。 「ここで、絶対に動くな」 その言葉に、サラが頷く。 「サラ」 バリーは、彼女の耳元で囁いた。 「さっきは、殴って悪かったな」 バリーは笑みを浮かべ、村の奥へ足を向けた。
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