一人、二人とバリーが放った弾丸で、政府軍の男たちが川に落ちていく。その隙に川へ飛び込むと、サラの襟首を掴み上げ、川から彼女を引きずり出した。 「放して!」 彼女は激しく抵抗するが、その腕力に敵うはずが無かった。 「死ぬ気か!?」 バリーは彼女の襟首を掴み、政府軍に応戦しながら、ジャングルの中へ彼女を引きずり込んだ。 「彼らを、助けるのよ!」 「彼らは、もう死んでいる!」 周囲に警戒しながら、バリーは先へ進む。 「もう、誰も死なせないわ!」 暴れるサラの頬を、バリーは容赦なく叩いた。同時に、手がつけられなかった、彼女の動きが止まる。 「目を覚ませ!」 バリーは掴んだ襟首に、力を込めた。 「お前が死んだら、お前がこれから助ける筈の、たくさんの命がなくなるんだ!」 透き通った水色の、その真摯な瞳を見た瞬間、サラは何故か涙を流す。 「泣いている暇があったら、自分が生き延びる術を考えろ!」 その場に、サラは力無く腰を落とした。 「どうすればいいの・・・?」 バリーは膝を屈すると、またサラの襟首を掴んだ。 「俺が愛したサラ・マクミランは、頭の良い女だった。彼女は、自分の息子を残して死んじまうような、馬鹿な真似はしない!」 彼女の眼に、息子の姿が映る。 「カイル・・・!」 サラの顔に、冷静さが戻っていく。見る見るうちに、彼女は“豪胆かつ繊細”なドクターの顔に戻っていった。 そしてバリーを見ると、はっきりとした口調で声を張り上げた。 「バリー、私をキャンプまで連れて行って!」 バリーは彼女に手を差し伸べると、自信に満ちた笑みを浮かべた。 「やっと戻ったな、スプーキー!」
夜が更けたとき、二人はベルドゥーラの村が見える、高台のジャングルに身を潜めていた。 バリーはバックパックから双眼鏡を取り出すと、村の様子を眺めた。村は完全に、政府軍の手に落ちたようだった。 村の入り口には、二人の守衛が立っており、四人が村を巡回している。二台の軍用ジープと、三台のピックアップが停まっていた。 夕方に本隊が駐留していたが、エステリへ向けて出発していた。手薄になっている、この隙に村に潜入し、軍用ジープを奪う。 バリーはサラにSIG P216を手渡すと、撃ち方と簡単なハンドシグナルを教えた。 「護身用だ。持ってろ」 サラは困惑していたが、バリーに従った。 「自分を護る為だけに、使え。いいな」 その言葉に、サラが頷いた。 「俺から、絶対に離れるなよ」 そう言うとバリーは腰を上げ、後に続くサラと共に、村の入り口へと向かった。
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