日も暮れかけた頃、太陽を背にクルーエルは、点々とした血の跡を見つけた。 救助人を乗せたPZ(ピックアップポイント)である。ここでバリーと、彼を助ける為に飛び降りたサラが存在していた場所だった。 点々とした血を辿り、クルーエルを始めとしたバリーのチームが、それに続いた。 「ここで、切れている」 クルーエルが確認した。下を見ると、330フィート以上はある断崖絶壁に立っていた。下には、流れの早い川が流れている。彼らは地図を開き、二人が生きていると仮定して、バリーが選ぶであろうルートを推定した。 「あいつなら、この川を南下したベルドゥーラに行くだろう」 と、クルーエルがチームの面々を見ながら言った。ベルドゥーラは、政府軍に占拠されている可能性があるとパワーズの意見もあったが、負傷した足とサラが同行していては身動きが取れず、多少の危険を冒しても行くはずだと、クルーエルがチームに言った。彼らはそれに納得すると、二人の後を追い始めた。
同じ頃、ベルドゥーラに近付いたところで、サラは休憩を取ろうと言い出した。彼女は川へ水を汲みに行くと言い出し、ジャングルから出ると、薄暗くなっていた川のほとりへ行った。 バリーは彼女の後ろへ着き、周囲の気配に警戒していた。 サラは川のほとりで顔を洗い、その水を水筒へ入れようとしたとき、バリーは“異様”な気配を察知し、上を見た。 「サラ、動くな・・・!」 その声に反応し、サラは動きを止め、同じように気配を感じた上を見た。 「あ、あれは・・・」 “それ”を見たサラの口から、声が思わず突いて出た。彼女の口を、背後からそっと押さえ、バリーはサラの身体を確保した。 「黙ってろ」 サラの耳元で囁く。 上を見ると、少し高い断崖の縁に、男が川を背に立っていた。 男は、後ずさりをする。男はスペイン語で何かを喋っていたが、バリーはそれを聞き取ることが出来なかった。そして男は誰かに撃たれ、川に落ちた。 それを皮切りに、次々と人が撃たれては、川に落ちていく。男も女も、子供も老人も構わずだった。川に、死体が流れた。それを見たサラの身体が、力強く反応する。彼らを助けに行こうとしていたのだ。 バリーは彼女の身体を抑えながら、ベルドゥーラの村が、政府軍に落ちたことを悟った。 崖の上に居るはずの、敵の気配を感じ取ろうと気を取られた隙に、サラがその腕から離れた。 「サラ!」 バリーの制止も聞かず、彼女は川の中に飛び込み、落ちた死体を助けようとした。その音に、政府軍が気付く。 「あのクソ女!」 政府軍の兵士が、川に飛び込んだサラに、銃を向けた。それに応戦する為、バリーは咄嗟にM16を構えた。
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