喉の渇きを感じながらふと目を覚ますと、カーテンの隙間から日が僅かに差し込んでいる。日の色と高さから、既に昼が過ぎていると分かった。辺りを見回すと、人の気配は無い。腕には注射の痕が残っている。恐らく、スピラーン神父が自分の部屋に尋ねてきた翌日だろうと推測していた。バリーは僅かに引いた痛みを堪えながら、上体を起こすとベッドから出た。立ち上げるとめまいはしない。どうやら、熱は引いたらしい。 バリーはよろめきながらドアを開け、廊下に出ると階下へ向かった。階下から人の声がする。ゆっくりと階段を下っていくと、エントランスに母親のミミ、ミシェル・タウバーと背を向けたスーツ姿の男が立っていた。 「いつまで寝ていたの!?」 バリーに気付いたミミがヒステリックに甲高い声を張り上げた。その声に、背を向けたスーツの男が振り返る。 「やぁ、久しぶりだねバリー」 眼鏡の奥の、狐のような猜疑心の強い目の男が笑みを浮かべた。 「お前は・・・」 男の名はダニエル・フロスト。州立大ロースクールの秀才で、父親のジョナサン・タウバーが以前雇っていた、バリーとアンジェリアの家庭教師だった男だ。一度大学からロースクールに進学するときに、この邸の家庭教師を辞めていたはずだった。 「どうして・・・」 「ダニーの勉強が落ち着いたから、またこれから家庭教師として来てもらうことにしたのよ」 ミミが煙草を吸いながら、エントランスにあるソファに腰掛ける。 「そういう訳だ。また、これからよろしくな」 ダニエル・フロストがバリーに握手を求めようと手を差し出した。 「アンは?」 差し出された手が、まるで見えていなかった。バリーはそれよりもアンジェリアの姿を探した。 「自分の部屋にいるわ」 ミミが言う。 「ダニーはアンジェリアの家庭教師になってもらうわよ」 バリーは既にアンジェリアの部屋へ向かっていた。
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