パワーズと、クルーエルが身を乗り出そうとしたが、倒れたバリーは「行け!」と、何度も怒鳴った。背後から襲ってくる、政府軍を撃ちながら。 「俺なら、大丈夫だ!だから、すぐに離脱しろ!」 バリーが無線を通して、メンバーに訴えた。救助人を抱える以上、無駄な犠牲を出すわけには行かなかった。それを充分に、メンバーは“理解”していた。 「分かった。彼らを下ろしたら、すぐに迎えに来る。それまで、持ち堪えろよ!」 クルーエルが、無線を通して話す。その間にも、ホアやパワーズ、マッカビーは迫りくる政府軍を倒すため、ヘリから援護射撃に回っていた。 浮上を始めた瞬間、一人の女がヘリから身を投げ出した。 「サラ!」 ゲートニクが叫ぶ。それはバリーも、確認していた。 「パイロット!二人を助ける。もう一度、タッチダウンしてくれ!」 クルーエルが叫ぶが、無線を通して、それを聞いたバリーが否定した。 「駄目だ!奴らスティンガー(携帯地対空ミサイル)を持ってる!早く離脱しろ!」 「シット!」 クルーエルが叫んだ。その後に、彼はパイロットに離脱指示を出すと、その空域を離脱した。メンバーは、取り残されたバリーと、飛び降りたサラを見た。倒れたまま、銃を撃っているバリーに走り寄ると、彼を起こしていた。 「立つわよ、いい!?」 「このスプーキー(変人)め!」 「舌、噛むわよ!!」 そう言うと、サラはバリーを起こし、肩を貸しながら立たせた。背後から迫りくる政府軍を尻目に、二人はジャングル目がけて走る。それでも、政府軍は絶えなかった。ジャングルに入り、少し走ったところで、そこは“行き止まり”となった。 下を見ると、川が流れているが、優に330フィート(100m)以上はある断崖絶壁だった。だが、二人に迷いは無かった。 「飛ぶわよ!」 「溺れるなよ!」 そう言うと、二人は断崖を飛んだ。バリーはともかく、サラは着水の瞬間まで、目を閉じることもなく、冷静だった。彼女は、左足を撃たれたバリーを、ずっと見ていたのだ。川に着水し、バリーは水面に浮上しようとするが、流れの早さに足を取られ、溺れかけた。そこへ、サラが彼に手を差し伸べる。二人は、水面に浮上した。
何とか岸まで辿り着いた二人は、息を切らせながら、その場に座り込んだ。 「全く、何て無茶な女なんだ・・・」 「その前に、礼ぐらい言ったらどうなの?」 そう言いながらサラは、背負っていたリュックから、医療用具を取り出すと、バリーの左足の治療を始めた。 「お前たちを救出に来たのに、お前が死んだら、元も子もないだろう!」 バリーの叱咤も構わず、サラは左の靴を強引に脱がせると、ふくらはぎに当たった銃創を見た。 「貫通してるわ。私が居る限り、これで死ぬことはないわよ」 そう言うと、サラは有無を言わさず、銃創をアルコールで消毒し始めた。小さくうめき声をあげたバリーを、逆に叱咤する。 「男のクセに、これぐらいで音を上げるなんて、情けない!」 「スプーキー(変人)!」 バリーの言葉に、サラが睨み付けた。 「誰がスプーキーよ!」 そのやりとりに、一瞬の沈黙の後、二人は同時に笑いを堪え切れなくなった。 「変わってない・・・」 「貴方もね・・・」
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