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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第206回   1978年9月 ニカラグア・エステリ市“大虐殺”
9月9日、高まる“革命”の機運に乗り、サンディニスタ民族解放戦線はニカラグア北部にある、エステリ市を攻撃、政府軍の軍事施設を破壊し、ここを占拠する。
そして9月20日早朝、政府軍はエステリ市に対し、大規模な空爆と砲撃を開始。その後で地上部隊を投入した。
政府軍は、サンディニスタ民族解放戦線のメンバーであるか、無いかに関わらず、無差別に発砲していった。これが世に言う、“エステリ大虐殺”の始まりである。

砲撃が止んだ深夜、顔に迷彩を施し、武装したバリーは、野戦病院と化した赤十字病院のエントランスに入った。
後ろに着いたクルーエルに、“中に入る”と、手で合図を出す。クルーエルが頷くと、3カウントの後、バリーとクルーエルはエントランスに突入。
「クリア!」
クルーエルが言う。その後に、タウバー・ファームのメンバーが続いた。中に入ると、大部分が空爆によって破壊されており、そこらじゅうに死体が転がっていた。だが情報では、まだ生存者がいるという報告があった。
バリーは、サンディニスタ民族解放戦線のホルヘ・パストラに依頼を受け、赤十字病院の医師と看護師、生存している患者の救出に来たのだった。
バリーは、病院の内部に進んだ。照明も何も無い状況で、館内は閑散としていた。
「本当に、生存者なんているのか?」
クルーエルが囁いた。
「人間が居る、気配がする。何人かは、生きている筈だ」
バリーの言葉に、クルーエルも、後に続いていたホア、パワーズ、マッカビーが納得した。
彼の鋭敏な神経は、ベトナム従軍時代から、全く衰えていなかったからである。
先に進むと、診察室が見え始めた。バリーはドアの前に立ち、クルーエルに“突入する”と手で合図を送る。バリーは指で3カウントを始め、1でドアを蹴破った。
突入した瞬間、右から何者かが棒で殴りかかった。バリーには、それが全てスローモーションで見えた。その攻撃を避けた彼は、敵の腕を取って背後に回りこみ、そのまま腕を締め上げた。
「お前は、誰だ?」
バリーは、締め上げていた男の耳元で、スペイン語で囁いた。
「私は、MSFの医師だ・・・」
男は、英語で応えた。
「MSF?」
「“国境なき医師団”・・・」
それを聞いたバリーは、締め上げていた腕を解いた。国境なき医師団とは、1972年に結成された非営利団体である。部屋の中には、数人の人間が生存していた。
「あんたの名は?」
バリーが言った。
「私は、フランツ・ゲートニク。ベルギー人だ。そういう君は、誰なんだ?ソモサの政府軍か?」
「FSLNの依頼を受けて、あんた達を救出しに来た。俺は、バリー・タウバーだ」
バリーが名前を名乗った瞬間、部屋に居た一人が、急に立ち上がる。
「まさか・・・。バリーなの・・・!?」
女の声だった。バリーは、目を細め、彼女にライトを当てた。
「お前は・・・!」


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