二人の男は、カルロスと同じ緑の戦闘服を着用し、黒いマスクを被っていた。腕には、赤と黒の真ん中にFSLNの文字が入った腕章を着けている。 「私は、NYタイムズの記者よ・・・」 クラウディアは両手を挙げ、降参の合図をした。 「あ・・・貴方たちは、エフ・エエ・セエレ・エネ(FSLN)のメンバーなの?」 男たちは、その問いに何も応えなかった。 「悪いが、アメリカ人は死んでもらう」 「何故・・・!?」 クラウディアは、恐怖を感じ、咄嗟に目を閉じてしまった。 しかし、何も起こらなかった。同時に鈍い音が、何度か響く。彼女は恐る恐る、目を開けた。さっきまで、彼女に銃口を向けていた二人の男が、地面に倒れている。その奥に、男が立っていた。 「貴方は・・・?」 クラウディアが、目を細める。男はゆっくりと歩を進め、かけていたサングラスを取った。 「危なかったな」 透き通った水色の瞳を光らせ、男は笑みを浮かべた。 「アメリカ人・・・?」 男はそれに頷くと、煙草をくわえ、火を点けた。 「この男たちは、サンディニスタの・・・?」 彼女は、倒れた二人の男たちを見た。 「こいつらは、多少痛めつけても、お前を殺すつもりはなかったんだろうがな」 「どういうこと?」 彼は膝を屈し、倒れた男たちの、黒いマスクを剥がした。クラウディアは、思わず声をあげた。 「二人とも、白人だわ!」 倒れている二人の男は、金髪のアングロサクソンである。どう見ても、インディオに近いニカラグア人とは、程遠い人種だった。 「こいつらは、CIAのケースオフィサーだ。アメリカ大使館員さ」 「どうして、CIAが・・・」 煙草の煙を吐きながら、男は続けた。 「簡単さ。今のソモサ政権は、アメリカの傀儡政権だからだ。お前を襲ったのは、サンディニスタ民族解放戦線の連中だったと、記事を書かせるためだ。そうすれば、アメリカ国内でサンディニスタ革命を支持していた連中を、黙らせることができる」 そう言うと、ネクタイを緩める。 「そんな・・・」 クラウディアは、感じていた恐怖を思い出したのか、その場に腰を着いた。 「まぁ政府なんて、そんなもんだ。お前みたいに美人な子は、世間でも話題になりやすいと思ったんだろ」 「貴方は・・・何者なの?」 男はクラウディアに、手を差し伸べた。 「俺は、バリー・タウバー。タダの、ビジネスマンさ」
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