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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第202回   202
二人の男は、カルロスと同じ緑の戦闘服を着用し、黒いマスクを被っていた。腕には、赤と黒の真ん中にFSLNの文字が入った腕章を着けている。
「私は、NYタイムズの記者よ・・・」
クラウディアは両手を挙げ、降参の合図をした。
「あ・・・貴方たちは、エフ・エエ・セエレ・エネ(FSLN)のメンバーなの?」
男たちは、その問いに何も応えなかった。
「悪いが、アメリカ人は死んでもらう」
「何故・・・!?」
クラウディアは、恐怖を感じ、咄嗟に目を閉じてしまった。
しかし、何も起こらなかった。同時に鈍い音が、何度か響く。彼女は恐る恐る、目を開けた。さっきまで、彼女に銃口を向けていた二人の男が、地面に倒れている。その奥に、男が立っていた。
「貴方は・・・?」
クラウディアが、目を細める。男はゆっくりと歩を進め、かけていたサングラスを取った。
「危なかったな」
透き通った水色の瞳を光らせ、男は笑みを浮かべた。
「アメリカ人・・・?」
男はそれに頷くと、煙草をくわえ、火を点けた。
「この男たちは、サンディニスタの・・・?」
彼女は、倒れた二人の男たちを見た。
「こいつらは、多少痛めつけても、お前を殺すつもりはなかったんだろうがな」
「どういうこと?」
彼は膝を屈し、倒れた男たちの、黒いマスクを剥がした。クラウディアは、思わず声をあげた。
「二人とも、白人だわ!」
倒れている二人の男は、金髪のアングロサクソンである。どう見ても、インディオに近いニカラグア人とは、程遠い人種だった。
「こいつらは、CIAのケースオフィサーだ。アメリカ大使館員さ」
「どうして、CIAが・・・」
煙草の煙を吐きながら、男は続けた。
「簡単さ。今のソモサ政権は、アメリカの傀儡政権だからだ。お前を襲ったのは、サンディニスタ民族解放戦線の連中だったと、記事を書かせるためだ。そうすれば、アメリカ国内でサンディニスタ革命を支持していた連中を、黙らせることができる」
そう言うと、ネクタイを緩める。
「そんな・・・」
クラウディアは、感じていた恐怖を思い出したのか、その場に腰を着いた。
「まぁ政府なんて、そんなもんだ。お前みたいに美人な子は、世間でも話題になりやすいと思ったんだろ」
「貴方は・・・何者なの?」
男はクラウディアに、手を差し伸べた。
「俺は、バリー・タウバー。タダの、ビジネスマンさ」


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