1月10日、「ラ・プレンサ」の社主であり、反政府指導者という立場であったペドロ・ホアキン・チャモロ氏の暗殺に怒りが爆発した民衆は、政府軍の銃を奪い、ついに武装蜂起した。 2月20日に起こったモニンボ地区での、住民による、この自然発生的な武装蜂起は、多大な被害を出した。これは、サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)にも、予測していなかったことだった。 彼らを恐れた政府軍・アナスタシオ・ソモサの息子は、戦車や大砲、爆撃機まで投入し、大砲や空爆まで加えたあと、マサヤの町を徹底的に、情け容赦なく破壊した。その跡に残ったのは、武器を手にとって立ち上がった男たち、年寄りや女、子供の死体が町中に転がっていた。
「ソモサは、ニカラグアを統治したいと思うなら、人民を殺して屍の上に君臨しなければならない」と、名も無い誰かが声高に叫んでいた。
ニューヨークタイムズの記者、クラウディア・シーカが、首都・マナグアに入ったのは、熱気に包まれ始めた6月の半ばだった。 額から流れ落ちる汗を拭きながら、革命の機運が高まり始めた、パラシオ・ナシオナル(国家殿堂)の前で、彼女は一人の少年を取材していた。 その少年の名は、カルロス・ペドロサ。 クラウディアは、彼に「何故、戦うのか?」と問いかけた。 「僕たちは、圧政を続けるソモサが許せないんだ。この苦しさから、僕の父さんも死んだ。だから、僕は奴らと戦うんだ」 健康的な褐色の肌の彼は、緑の戦闘服を身に纏い、AK47を肩にかけ、人懐っこい笑顔を浮かべていた。 「この戦いは“革命”なの?」 クラウディアが、続けて彼に聞いた。 「革命かどうかは、正直、僕には分からない。でも、この苦しさには耐えられないんだ。ソモサが悪いから、みんな苦しむ。だから奴を倒す!」 クラウディアは、彼を見た。まだ幼さが残る彼は、サンディニスタ民族解放戦線の“革命”の戦士なのだ。 カルロスは、FSLNのメンバーが集まる、マナグア支部に案内すると言い、彼女を引導する。クラウディアは、カルロスの後を追った。 「待って!」 カルロスは振り返りもせず、パラシオ・ナシオナル(国家殿堂)に向かう人々の波を掻い潜り、通りの脇に入った。クラウディアは彼に追い着こうと走る。通りの脇に入り、裏通りに出た。その途端、そこは人の気配が全く無い、表通りとは全く別の世界が広がっていた。彼女は、カルロスの姿を捜すが、誰もいない。 「カルロス!」 クラウディアは叫んだ。 「どこなの?カルロス!」 彼女は、何かの殺気を感じていた。誰もいない裏通りに、恐怖を感じ始める。 「カルロス!」 頭の中で、自分の乱れた呼吸が轟く。ふと気配を感じ、背後を振り返る。 そこには、銃を構えた二人の男が立っていた。 「お前、アメリカ人だな」
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