20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第196回   196

バリーにその訃報が届いたのは、ケイマン諸島へ戻った一ヵ月後のことだった。
「シール・タリブが死んだ」
クルーエルが、小さく呟いた。
カイバル峠で、ムジャヒディンの軍事訓練を請け負っていた、ブルース・マッカビーからの報告だった。
タリブは峠の頂から、足を滑らせて死んだとのことだった。仲間たちは、皆事故として扱っているらしい。
「私は、近いうちに死ぬだろう」
バリーは、タリブの言葉を思い出していた。
シール・タリブは死んだ。恐らく、仲間に殺されたのだろう。如何なる理由があるにせよ、もうムジャヒディン、アフガニスタンに尽力する理由は、無くなったのだ。
「デイビッド、マッカビーに連絡しろ。“今すぐ撤収しろ”とな」
バリーがそう言うと、クルーエルはどこか納得しない表情を浮かべながら、首を立てに振った。

65年に創設されたアフガニスタン人民民主党が、ムハンマド・タラキとハフィズラ・アミンが率いるパルチャム派(旗)とバブラック・カルマル率いるハルク派(人民)に分裂。
77年に再統一するも、78年にアミンが軍事クーデターを起こし、大統領であったダウド一族が処刑される。いわゆる、四月革命であった。
これに対して、ムジャヒディンが一斉蜂起。
ここから、20年以上に渡るアフガニスタン紛争へ突入する。
サウジアラビアからの資金援助や、アメリカから最新鋭の武器が補給されるも、その殆どはムジャヒディン達の手に届くことは無かった。
支援していたはずのパキスタンや、ムジャヒディンのリーダー達が、上前を搾取していたのだった。彼らの言い分は「アフガニスタンの為に、我々が預かるのだ」と。

バリーは煙草を吸いながら、大海原に沈み行く太陽を眺めていた。
空を赤く染めていた太陽は、やがて完全にこの世から消え、そして長い夜が訪れる。
「アフガニスタンに夜が明けるのは、いつになるのだろう・・・」
バリーは、自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114