「そう言えば、ウランはどこに売ったのだ?」 テントから出ると、二人は峠の頂に立ち、満点の夜空を見上げながらタリブが言った。 「パキスタンだ。妥当だろ?」 そうバリーが応える。タリブは、満足げな表情を浮かべた。 ソ連にウランを売るのは、問題外であった。ならばアメリカという選択肢もあったが、バリーは代価である麻薬ルートを売った。アメリカにウランを売るのは筋違いだが、いずれムジャヒディン達を支援してもらう必要がある。今回のアフガンで、CENTACという組織の一部も垣間見ることができた。 そうすると、これから起こるソ連との戦争に、最もアフガンにとって必要な国は、隣国であるパキスタンだった。 「中国にも、永続的な補給路は確保したが、やはり隣国のパキスタンは、それ以上に必要不可欠だ」 ウランを売ることで、補給路の確保を取り付けた。補給路の確保は、戦争に勝つ上で最も重要な課題である。 「パキスタンの補給路は、これで絶対的なものになった」 そう言うと、バリーは煙草をくわえた。 「持ちつ、持たれつというわけだな」 タリブは笑みを浮かべる。 「タウバー。私は、近いうちに死ぬだろう」 タリブは、徐に話を切り出した。 「何故だ?」 ダウド政権が、イスラム教政党を排斥してから、このカイバル峠やペシャワールに、仲間が集結しつつあった。彼らは口々にダウドを打倒しようと、声高に叫んではいたが、皆タリブを毛嫌いしていたのだ。 「ことあるごとに、彼らは私の言葉を非難した。どうやら、ムジャヒディンという勢力を持つ私に、脅威を感じているようだ」 彼らは国を想う心よりも、結局は己の身の保身ばかり考えていたのだった。そんな彼らにとって、国の為に尽力するタリブは、目の上のこぶに過ぎなかった。 「あんたが彼らのリーダーになれば、今度は自分が粛清されるかもしれない。と勝手に思い込んでいるというわけだな」 「そんなところだ」 タリブは、そんな者たちの日に日に増していく殺意を、肌に感じているのだった。 「あんたが、もし死んだら、俺はアフガンから手を引く」 その言葉に、タリブはバリーの顔を見た。 「俺は、ムジャヒディンに武器を売ったのではない。あんたが気に入ったから、肩入れしただけだ。あんたが死んだら、アフガニスタンに、未来は無い」 タリブは、安堵の笑みを浮かべる。 「タウバー、お前はアメリカ人のクセに、変わっているな」 「昔から、よく言われる」
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