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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第194回   194
それを見たバリーは、両手を前に突き出し、少し腰を落として、構えの姿勢を取る。
「カモン、マザー・ファッカー!」
バリーの挑発にアノヒンが激昂し、彼に飛び掛る。その瞬間、バリーの目には全てが無音で、スローモーションに見えた。ナイフを突き出したアノヒンの腕を、回りながら掴み、そのまま円を描くようにひねり上げる。同じようにアノヒンの身体が、流れに逆らえず、また地面に叩きつけられた。
「無駄だ。俺には、お前の一寸先が見える」
そう言いながら倒れたアノヒンの頭を掴むと、バリーはその腕に力を込めようとした。
「バリー、止めろ!」
クルーエルの声に反応し、バリーは、その動作を止めた。
「こいつは、まだ殺してはいけない!」
クルーエルはバリーの眼を見る。その眼は、今までに見たことが無いような、冷徹な光を放っていた。

バリーは、アノヒンの手足を縛り上げる。彼をキャンプに連行しようとしたとき、崖の向こうから轟音が響き渡った。
「タウバー、9時の方向からソ連のMi-17だ!」
無線機から、ホアが叫んだ。見ると、二機のMi-17がこちらへ向かっている。アノヒンの隊のサポートヘリだ。
「マッカビー、スティンガーで撃ち落せ」
バリーが無線で指示を出す。キャンプの向こうで、カモフラージュをしていたブルース・マッカビーは、まだ実戦配備されていないプロトタイプのFIM-92スティンガー(携帯地対空ミサイル)を構え、照準を合わせる。
トリガーを引くと、大きな反動と共にミサイルが発射された。それを見たソ連のMi-17は、ミサイルを避けようと旋回する。しかしミサイルは軌道を変え、旋回したMi-17と同じ軌道に乗ると、それを撃墜した。
それを見たムジャヒディン達は、大歓声を上げた。
「赤外線シーカーで、Mi-17の熱源を追うんだ。奴からは、逃げられんさ」
バリーは、隣に立っていたタリブに説明した。
もう一機のMi-17が反転し、その空域を脱出しようとしたが、まだスティンガーの射程範囲内だった為、逃げ切ることが出来ずに毒牙の餌食となった。
「すげえな!」
二度トリガーを引いたマッカビーが、感嘆の声を上げながら、口笛を鳴らした。

タリブのテントで、アノヒンは拷問を受けた。
ソ連軍の配備状況などを尋問したが、途中何度もバリーを「裏切り者」と詰った上、彼は一切口を割らなかった。バリーは、タリブに銃を手渡す。それを受け取ったタリブは、アノヒンの額に銃口を向け、トリガーを引いた。
「いいのか?これで、ソ連との争いは避けられん」
バリーは静かに言った。
「元より、承知の上だ。奴らには、我々を支配することなど出来ない」
タリブは、その手に拳を握っていた。


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