それを見たバリーは、両手を前に突き出し、少し腰を落として、構えの姿勢を取る。 「カモン、マザー・ファッカー!」 バリーの挑発にアノヒンが激昂し、彼に飛び掛る。その瞬間、バリーの目には全てが無音で、スローモーションに見えた。ナイフを突き出したアノヒンの腕を、回りながら掴み、そのまま円を描くようにひねり上げる。同じようにアノヒンの身体が、流れに逆らえず、また地面に叩きつけられた。 「無駄だ。俺には、お前の一寸先が見える」 そう言いながら倒れたアノヒンの頭を掴むと、バリーはその腕に力を込めようとした。 「バリー、止めろ!」 クルーエルの声に反応し、バリーは、その動作を止めた。 「こいつは、まだ殺してはいけない!」 クルーエルはバリーの眼を見る。その眼は、今までに見たことが無いような、冷徹な光を放っていた。
バリーは、アノヒンの手足を縛り上げる。彼をキャンプに連行しようとしたとき、崖の向こうから轟音が響き渡った。 「タウバー、9時の方向からソ連のMi-17だ!」 無線機から、ホアが叫んだ。見ると、二機のMi-17がこちらへ向かっている。アノヒンの隊のサポートヘリだ。 「マッカビー、スティンガーで撃ち落せ」 バリーが無線で指示を出す。キャンプの向こうで、カモフラージュをしていたブルース・マッカビーは、まだ実戦配備されていないプロトタイプのFIM-92スティンガー(携帯地対空ミサイル)を構え、照準を合わせる。 トリガーを引くと、大きな反動と共にミサイルが発射された。それを見たソ連のMi-17は、ミサイルを避けようと旋回する。しかしミサイルは軌道を変え、旋回したMi-17と同じ軌道に乗ると、それを撃墜した。 それを見たムジャヒディン達は、大歓声を上げた。 「赤外線シーカーで、Mi-17の熱源を追うんだ。奴からは、逃げられんさ」 バリーは、隣に立っていたタリブに説明した。 もう一機のMi-17が反転し、その空域を脱出しようとしたが、まだスティンガーの射程範囲内だった為、逃げ切ることが出来ずに毒牙の餌食となった。 「すげえな!」 二度トリガーを引いたマッカビーが、感嘆の声を上げながら、口笛を鳴らした。
タリブのテントで、アノヒンは拷問を受けた。 ソ連軍の配備状況などを尋問したが、途中何度もバリーを「裏切り者」と詰った上、彼は一切口を割らなかった。バリーは、タリブに銃を手渡す。それを受け取ったタリブは、アノヒンの額に銃口を向け、トリガーを引いた。 「いいのか?これで、ソ連との争いは避けられん」 バリーは静かに言った。 「元より、承知の上だ。奴らには、我々を支配することなど出来ない」 タリブは、その手に拳を握っていた。
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