「ポール・リブキン・・・」 ジョージは、その名前に覚えがあった。実際に会ったことはないが、異色の経歴を持つ特別捜査官と聞いていた。そして次期副長官の声が高い。 そんな男が、何故バリーの死体を見に来たのだろうか? ワシントンに帰る日を延ばし、ジョージはバリーの足取りを追った。 シカゴ市警と行政ビルで、バリーが立ち上げた“タウバー商会”を徹底的に調べ上げた。犯罪録、税収記録、登記録等を調べるが、何も怪しいところは無かった。タウバー商会で扱っていた食品にも、何ら問題は無かったのだ。 次に、移動記録を調べた。すると、タウバー商会を立ち上げてすぐに内戦直前のレバノン・ベイルート、陥落寸前のベトナム・サイゴン、共和制になった直後のアフガニスタン・カブール、パキスタン・ペシャワールへ行っている。 「全部、紛争地帯じゃないか・・・」 アフガン、パキスタンに関しては、前年から何度も足を運んでいる。 ジョージはシカゴを出ると、ワシントンに戻り、国防総省でバリーのベトナム従軍時の記録を調べた。通常の歩兵部隊で従軍していたものと思っていたジョージは、その記録に、驚愕する。 バリーは第4師団LRP(ラープ)、MACV-SOG(特殊作戦グループ)に配属され、二度もMIA(行方不明者)になって生還し、スペックE-4(伍長)からO-2(中尉)と異例の昇進を果たしていた。 「MACV-SOG・・・?」 MACV(南ベトナム軍事援助司令部)とは、軍情報部とCIAから成る組織だった。 「CIA・・・」 ジョージは、バリーが従軍していたときの作戦内容などを閲覧しようとしたが、LRPそしてSOGに関する資料は、全てトリプルAが付いた機密事項だった。 「今度、俺に会ったら、必ず俺を撃て」 ジョージの脳裏に、バリーの言葉が甦った。 彼は、やはりアンジェリアを殺した犯人を知っている。アンは、バリーが抱えた問題に巻き込まれた可能性があるのでは、とジョージは考えた。 その間に、シカゴ市警のアダムスから連絡が入った。照合の結果、あの焼死体は、バリー・タウバーではなかった。 「バリー、お前は一体、何をしようとしているんだ・・・?」
1977年3月、ケイマン諸島・グランドケイマン島。 オーウェンロバーツ国際空港に、一機のエアバスが着陸する。停止したエアバスにタラップが設置され、中から乗客が並んで降り始めた。その中で、一人の男がこの地に降り立つ。サングラスをかけた男は、その温暖な気候に、ネクタイを緩めた。イミグレーションを通過し、パスポートに判が押される。空港を出ると、エントランスの前に、数台のタクシーに並んでいた赤いピックアップが停まっていた。男がそれに乗り込むと、車が発進した。 「何とか、無事に来れたようだな。バリー」 運転席に座っていたクルーエルが、笑みを浮かべた。その男・バリーは被っていたカツラと着け髭を取り、サングラスを外した。 「大変だった。まさか、奴らあんなに大量の爆薬を仕込んでたとは。本当に死ぬところだったんだぞ」 そう言うとバリーはワイシャツの袖を巻くり上げ、笑みを浮かべた。
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