その日、バリーはシカゴの事務所を出た。ビルの前に停めてあった車に乗り込もうとしたとき、後ろに停まっていた車から、3人の男たちがバリーを囲んだ。 「我々に、付いてきてもらおう」 男たちはバリーの腹に銃口を突きつける。騒げば、撃つということだった。彼らはバリーを車の中に押し込めると、隣に一人の男が座った。 「出せ」 男が言う。バリーを乗せたまま、車が発進した。 「何だ、アンタ達は?」 バリーは怯えた顔で、男たちに向かって言った。隣に座った男が、かけていたサングラスを取り、バリーを睨みつける。 「お前に、聞きたいことがある」 そう言いながら、バリーのこめかみに銃を突きつけた。 「な、何だ・・・?」 「この男を知っているな」 そう言うと、隣に座った男は一枚の写真をバリーに見せた。そこに写っているのは、ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブである。 「ま、待ってくれ。その前に、アンタ達は誰だ?」 隣の男が、バリーのこめかみに突きつけた銃口を、更に強く押し付けた。 「分かった、分かった。話すから、殺さないでくれ」 バリーは隣に座った男の顔を見る。男はスーツを着ていたものの、その鍛え上げられた身体は隠せなかった。漆黒の瞳を持つ、茶色の髪の男。恐らくこの男たちの中で、リーダー格の男だろう。 「何度もタリブに面会を申し込んでいるんだが、なかなか会えないんだ」 「嘘を言うな!」 漆黒の瞳の男が、また突きつけていた銃口を押し付ける。 「ほ、本当だ・・・。ペシャワールでコルボン・アリという男が窓口なんだが、未だに会わせてくれない」 漆黒の瞳の男は、助手席に座っていた男と目を見合わせた。 「本当か?」 「本当だ」 バリーが震える声で応えた。 「よし、ではタリブに関する情報が入り次第、すぐに連絡しろ」 そう言うと男はメモに電話番号を書き、バリーに渡した。 「わ、分かった・・・。必ず連絡する!」 「隠せば、お前の命は無いと思え」
裏通りを走行中の車のドアが開き、バリーが車内から蹴落とされる。バリーは転がりながら、受身を取った。 「全く、あいつら・・・ひでえことしやがる!」 立ち上がると、スーツに付いた埃を落とした。 「このスーツ、高かったんだぞ!」 バリーは胸ポケットから、黒い革のケースを取り出した。中を開くと、鷲のバッジが光っている。その下には、隣に座っていた、漆黒の瞳の男の写真が写っていた。男の身分証を掏っていたのである。 「FBI特別捜査官、ポール・D・リブキンか・・・」
一週間後、バリーはいつもシカゴ・トリビューンを買う露店の脇で、ある男を待っていた。その日のシカゴ・トリビューンを開き、ビルの壁にもたれて記事を読んでいると、その露店で雑誌を買った男が、バリーの前を通り過ぎようとした。 通り過ぎる瞬間、その男は手にしていた雑誌の下から、バリーに丸めた封筒を手渡した。男はそのまま立ち去る。彼は、このシカゴで探偵事務所を構える、ジョニー・スティールだった。 バリーは手にした封筒とシカゴ・トリビューンを丸めると、脇に停めてあった車に乗り込んだ。 スティールから受け取った封筒を開けると、中には数枚の書類が纏められている。ファイルを開くと、クリップで留めた最初のページに、一枚の写真があった。ポール・D・リブキンの写真だ。そこに小さな紙で「この男は危険だ。あまり、深入りするなよ」とスティールのメモが貼り付けられている。 バリーはスティールに、このポール・D・リブキンの身辺調査を依頼していたのだった。
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