バリーは表情を強張らせた。 「何だ、そんなことまで分かっていたのか」 その言葉に、ガーツは手応えを感じていた。 「やはり、タリブだな」 「それがだな・・・」 バリーは吸っていた煙草の灰を、灰皿に落とした。 「何度も行ってるんだが、俺も未だに会ったことが無いんだ・・・」 ガーツはもう一度、バリーの眼を見る。それが本当か嘘か、確かめようとしていた。コルボン・アリという男がムジャヒディンの窓口であり、タリブに面会を申し込んでいるが、いつも受け流されるとバリーが言った。 「シール・タリブという男が、架空の人物ではないかと思うんだが。例えば、数人のリーダー集団を“シール・タリブ”と言っているとか」 バリーの言葉に、ガーツは自分の顎鬚を触った。彼が考えている仕草である。 「だが、彼に関する情報ソースは信用できる」 ガーツは反論した。 「どうせ、CIAだけのソースだろ?俺に言わせりゃ、そんな情報ソースはゴミだ」 「やけに強気だな」 バリーは短くなった煙草を、灰皿に押し付けた。 「当然だ。一年近くアフガンに通ってるが、シール・タリブという男の気配を感じないからな」 ガーツはバリーの言葉に、どこか府に落ちない点があったが、それを裏付ける根拠も無かった。それには、決定的な情報不足だったのだ。 「そうだ、あんたに売りたい物がある」 「何だ?」 バリーは不敵な笑みを浮かべる。 「手数料は前回と同じ、10%でいい。大サービスだ」 「ベトナムで、お前が牛耳った“モノ”か・・・」 それは、麻薬を意味していた。 「ルートを確立させた。あとは、引き取り先を探してたのさ」 ガーツが吸い終わった煙草を灰皿に押し付け、新しい煙草をくわえる。 「お前は、俺を憎んでるのかと思っていたが・・・」 その口に笑みを浮かべた。 「憎いさ。しかし、憎しみとビジネスは別だ。俺は、ビジネスが好きでね」
バリーは窓の外を見た。ガーツが車に乗り込み、車を発進させる。 「やはり、間抜けな男だ・・・」 ガーツの所属する秘密作戦チームに下された、シール・タリブの確保。だが、その背景にある“ウラン”の真実は、末端である彼らには届いていないようだ。 ガーツの背後にいるのはCENTACだろう。いずれ、奴らが姿を現すに違いない。 「まだ動く時期ではない。もう少し、様子を見るか・・・」
10月、時を待っていたバリーの下に、ついに“彼ら”が姿を現した。
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