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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第186回   186
バリーは表情を強張らせた。
「何だ、そんなことまで分かっていたのか」
その言葉に、ガーツは手応えを感じていた。
「やはり、タリブだな」
「それがだな・・・」
バリーは吸っていた煙草の灰を、灰皿に落とした。
「何度も行ってるんだが、俺も未だに会ったことが無いんだ・・・」
ガーツはもう一度、バリーの眼を見る。それが本当か嘘か、確かめようとしていた。コルボン・アリという男がムジャヒディンの窓口であり、タリブに面会を申し込んでいるが、いつも受け流されるとバリーが言った。
「シール・タリブという男が、架空の人物ではないかと思うんだが。例えば、数人のリーダー集団を“シール・タリブ”と言っているとか」
バリーの言葉に、ガーツは自分の顎鬚を触った。彼が考えている仕草である。
「だが、彼に関する情報ソースは信用できる」
ガーツは反論した。
「どうせ、CIAだけのソースだろ?俺に言わせりゃ、そんな情報ソースはゴミだ」
「やけに強気だな」
バリーは短くなった煙草を、灰皿に押し付けた。
「当然だ。一年近くアフガンに通ってるが、シール・タリブという男の気配を感じないからな」
ガーツはバリーの言葉に、どこか府に落ちない点があったが、それを裏付ける根拠も無かった。それには、決定的な情報不足だったのだ。
「そうだ、あんたに売りたい物がある」
「何だ?」
バリーは不敵な笑みを浮かべる。
「手数料は前回と同じ、10%でいい。大サービスだ」
「ベトナムで、お前が牛耳った“モノ”か・・・」
それは、麻薬を意味していた。
「ルートを確立させた。あとは、引き取り先を探してたのさ」
ガーツが吸い終わった煙草を灰皿に押し付け、新しい煙草をくわえる。
「お前は、俺を憎んでるのかと思っていたが・・・」
その口に笑みを浮かべた。
「憎いさ。しかし、憎しみとビジネスは別だ。俺は、ビジネスが好きでね」

バリーは窓の外を見た。ガーツが車に乗り込み、車を発進させる。
「やはり、間抜けな男だ・・・」
ガーツの所属する秘密作戦チームに下された、シール・タリブの確保。だが、その背景にある“ウラン”の真実は、末端である彼らには届いていないようだ。
ガーツの背後にいるのはCENTACだろう。いずれ、奴らが姿を現すに違いない。
「まだ動く時期ではない。もう少し、様子を見るか・・・」

10月、時を待っていたバリーの下に、ついに“彼ら”が姿を現した。


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