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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第185回   185
翌3月、CIA本部・ラングレーにいた秘密作戦チームのエドナー・ガーツは、アフガニスタンにいた同じ地域担当室・アフガン支局のレナード・コンプトンから連絡を受けていた。
ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブの足取りが掴めないと。
そこで75年の7月から数回アフガニスタンに入国している、バリー・タウバーの存在を挙げた。
「奴は、君のコントラクト・エージェントではなかったのか?」
電話の向こうで、コンプトンが言った。
「厳密には違う。こちらから依頼をするだけの関係だ」
ガーツが応えた。
「彼は、パキスタンにも去年からの半年で4回入国しているようだ。彼は何か知っているのではないのか?」
コンプトンは、昨年の7月にアフガンに入ったバリーを一度尾行したが、すぐに撒かれたと言った。
「一度、こちらで確認してみよう」
電話を切ると、ガーツはシカゴへ向かった。

シンディ・ハスラムからは、タウバーが何度かアフガニスタンへ向かったと報告を受けていた。反政府勢力・ムジャヒディンのリーダーをKGBよりも先に確保するのは、最重要任務ではあったが、こうも足取りが掴めないということは、彼はKGBに捕らえられたか、もしくは死んだかのどちらかであった。
レナード・コンプトンの言うように、バリー・タウバーは何か知っている可能性もある。
シカゴに着き、レンタカーでイースト・エルム・ストリートまで来ると、タウバー商会が入っているビルの前に車を停めた。二階のドアまで上がり、ドアの呼び鈴を鳴らす。
ドアが開くと、中からバリーが顔を出した。
「あんたか」
ガーツを中に招き入れる。
「相変わらず、殺風景で何も無い事務所だな」
ガーツは、デスクの前のソファに腰掛けた。
「最近は忙しくてな。なかなか事務所の整理が出来ん」
バリーが差し出した灰皿を見ると、ガーツは煙草を取り出し、火を点ける。
「で、俺に話しって何だ?」
そう言いながら、バリーも煙草をくわえた。
「貴様、最近はアフガニスタンに出入りしているらしいな」
「ああ」
「何の用でだ?」
バリーは蔑むような笑みを浮かべる。
「俺の商売は武器だ。それは、あんたが一番よく知っているだろう」
「アフガンに、戦争の臭いを嗅ぎつけた訳か」
ガーツはバリーの眼を見る。
「金を稼がないとな。案外、会社経営ってのは難しいんだぞ」
事務所の中を見回した。高価な装飾品なども無く、キャビネットにファイルが何冊かあり、決して儲かっているようには見えなかった。バリーが言ったことは、強ち嘘ではないようだ。
「武器販売の相手は、誰だ?」
ガーツが言った。
「それは商売上の機密だ」
「ムジャヒディンのリーダー、シール・タリブでは無いのか?」


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