夜の7時が過ぎ、ムジャヒディン達は山頂の平らな所に布を敷き、そこをモスクとした。西のメッカに向かって、祈りを始めた。彼らは、敬虔なイスラム教徒だった。
夕食のナンとチャイを囲んでいたときに、タリブがバリーに言った。 「タウバー、お前は強いのか?」 バリーは即座に応えた。 「そうだな、多分その辺の兵士よりは強いだろう」 「銃を持たなくてもか?」 タリブの問いに、バリーが頷いた。 「見せてくれ」 彼は立ち上がり、6人のムジャヒディンに、自分に殴りかかるよう話した。バリーは構えもせず、手を前で組んでいただけだった。 「いつでもいいぞ」 ムジャヒディン達は、互いに顔を見合わせた。 「本当に、いいのか?」 ムジャヒディンの一人がそう言ったが、バリーは手招きした。それを見た一人が、バリーに飛び掛る。 その光景に、ムジャヒディン達は驚愕した。 バリーが手を軽く振りかぶしただけで、飛び掛った6人のムジャヒディン達が、ものの見事に投げ飛ばされていったのである。投げ飛ばされた男たちは皆、呆然としていた。タリブも、何が起こったか理解できなかった。 「それは・・・何という武術なのだ?」 タリブが言った。 「日本の“アイキドー”という技だ」 バリーが応える。 「日本?敗戦国の日本か?お前は日本人なのか?」 「いいや、アメリカ人だ」 タリブは目の前にいるバリーに、興味を持った。
暗闇の中、タリブとバリーはキャンプから離れた岩場で、話をした。バリーはタリブの知識の深さに感銘を受けていた。アフガニスタンでも指折りの豪商の息子であった彼は、フランスのソルボンヌ大学へ留学し、政治・経済学を学んでいた。 シール・タリブは、知識と指導力を持ち合わせ、カリスマ性を持った誇り高き男だった。 「混乱を起こそうとしている、現政権を追い出すために戦うと言ったな」 バリーはタリブの眼を見た。 「戦う以外に、他に方法は無いのか?」 タリブは、小さく頷いた。 「この国は、ようやくイギリスから独立し、我々の手で経済を伸ばさなければならないときに、また大国が進入してきたのだ」 タリブは、現政権の背後に、ソ連が存在していることを気付いていた。 「我々は奴隷になる気は無い。我々の国は、我々自身で伸ばさねばならない」 だがら命を賭して戦うのだと、バリーに言った。 「大切なものは、己の手で護るということか」 「そうだ」 バリーは、このタリブという男が気に入った。 「すぐに用意できる武器は、いつぐらいになりそうだ?」 タリブが話を切り返した。 「明日の朝に分かる。それまで、待ってくれ」
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