五日後、バリーはカイバル峠の入り口に立っていた。峠の入り口で車を停め、雇った通訳と共に、“彼ら”を待った。 アフガニスタン首都・カブールでKGBとCIAの尾行を振り切り、バリーは反政府勢力のリーダーである、シール・タリブを捜す為、ここへ赴いていた。タリブが数日前から行方をくらませているという事だったが、バリーには思い当たる場所があった。 ここ、カイバル峠である。 半月前、パキスタン軍統合情報局・ISIの局員であるムハンマド・ウル・シェイブに、この街道で山賊が出ると警告を受けていた。アフガニスタンからパキスタンに入った最初の街・ランディコタルでも、パキスタン・ペシャワールでも、この街道を通ることを恐れ、まわり道する商人が多いと聞いていた。 だとすれば、ここは身を隠すには、絶好の場所である。 「ダ、ダンナ・・・こんな所に停まって、大丈夫ですか?」 パシュトゥーン人の通訳が、恐怖のあまり声を震わせていた。 「ま、問題無いだろう」 バリーは、屈託の無い笑みを浮かべる。 「そんな・・・武器も何も無いんですよ・・・」 「心配すんな。でも、俺が撃たれたら、その時は助けなくていいから、逃げろよ」 その笑顔に、更に不安になる通訳だった。彼は何気なく気配を感じ、そのまま視線を、外へ向けた。通訳が向けた視線を、バリーも追う。 「おお、おいでなすったようだ!」 バリーは車の外へ出た。峠の向こうから、五台のトラックが、砂煙を上げながら、こちらへ向かってくる。荷台には、ライフルを持った男たちが乗っていた。バリーは棒きれに、白のハンカチを付け、片手でそれを振り、もう片手を高く上げた。降参の姿勢である。 彼らはバリーの前で停まり、トラックから降りると一斉に銃口を向けた。 「俺はアメリカから来た、武器商人だ」 バリーの言葉を、通訳がパシュトゥン語に訳し、彼らに言った。 「武器取引の商談をするために、シール・タリブを捜している」 その言葉を聞いた瞬間、バリーに銃口を向けていた男達が、互いの顔を見合わせた。バリーは、ここに“彼”が居ることを確信する。 「アンタ達は、“フェダイン”か?」 フェダイン、イスラム語で“戦士”を意味していた。男達の一人が、バリーに向かって何かを言う。通訳が、お前の名を名乗れと言った。バリーは、自分の名前を名乗る。 「どうだ?フェダイン・タリブはいないのか?」 そう言うと、トラックの運転席から、一人の男が降りてきた。男は真っ白のパトゥーを纏い、鋭い眼光を向け、バリーの前に立った。 「フェダインでは無い。我々は、“ムジャヒディン”だ」
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