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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第180回   1975年8月 ムジャヒディン・聖戦士
五日後、バリーはカイバル峠の入り口に立っていた。峠の入り口で車を停め、雇った通訳と共に、“彼ら”を待った。
アフガニスタン首都・カブールでKGBとCIAの尾行を振り切り、バリーは反政府勢力のリーダーである、シール・タリブを捜す為、ここへ赴いていた。タリブが数日前から行方をくらませているという事だったが、バリーには思い当たる場所があった。
ここ、カイバル峠である。
半月前、パキスタン軍統合情報局・ISIの局員であるムハンマド・ウル・シェイブに、この街道で山賊が出ると警告を受けていた。アフガニスタンからパキスタンに入った最初の街・ランディコタルでも、パキスタン・ペシャワールでも、この街道を通ることを恐れ、まわり道する商人が多いと聞いていた。
だとすれば、ここは身を隠すには、絶好の場所である。
「ダ、ダンナ・・・こんな所に停まって、大丈夫ですか?」
パシュトゥーン人の通訳が、恐怖のあまり声を震わせていた。
「ま、問題無いだろう」
バリーは、屈託の無い笑みを浮かべる。
「そんな・・・武器も何も無いんですよ・・・」
「心配すんな。でも、俺が撃たれたら、その時は助けなくていいから、逃げろよ」
その笑顔に、更に不安になる通訳だった。彼は何気なく気配を感じ、そのまま視線を、外へ向けた。通訳が向けた視線を、バリーも追う。
「おお、おいでなすったようだ!」
バリーは車の外へ出た。峠の向こうから、五台のトラックが、砂煙を上げながら、こちらへ向かってくる。荷台には、ライフルを持った男たちが乗っていた。バリーは棒きれに、白のハンカチを付け、片手でそれを振り、もう片手を高く上げた。降参の姿勢である。
彼らはバリーの前で停まり、トラックから降りると一斉に銃口を向けた。
「俺はアメリカから来た、武器商人だ」
バリーの言葉を、通訳がパシュトゥン語に訳し、彼らに言った。
「武器取引の商談をするために、シール・タリブを捜している」
その言葉を聞いた瞬間、バリーに銃口を向けていた男達が、互いの顔を見合わせた。バリーは、ここに“彼”が居ることを確信する。
「アンタ達は、“フェダイン”か?」
フェダイン、イスラム語で“戦士”を意味していた。男達の一人が、バリーに向かって何かを言う。通訳が、お前の名を名乗れと言った。バリーは、自分の名前を名乗る。
「どうだ?フェダイン・タリブはいないのか?」
そう言うと、トラックの運転席から、一人の男が降りてきた。男は真っ白のパトゥーを纏い、鋭い眼光を向け、バリーの前に立った。
「フェダインでは無い。我々は、“ムジャヒディン”だ」


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