20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第18回   18
マーサに教会に戻り、急ぎ抗生物質を持ってくると告げタウバー邸を後にすると、スピラーンは教会に向かった。
激しく揺れる車の中は夏の日差しで焼けるように暑くなっていく。スピラーンは車の窓を開けるために、ノブを回した。外から土と緑の匂いが入り込んでくる。心地よい匂いだった。
 その瞬間、目の前に閃光が走り、同時に何かが見えた。
スピラーンの鼓動が高鳴り、急に息苦しくなる。堪らず胸を押さえ、急ブレーキを踏み込んだ。
「父さん!」
再び目の前に閃光が走り、また何かが見えた。
それは幼少の頃に、失業した父親から絶えず暴力を受けていた忌まわしい記憶が、閃光となって蘇っていたのだった。

 教会に戻る頃には、陽が傾き始めていた。車を停め、中に入るとロレーナが狭い教会の中を掃除している。
「早かったのね」
汗まみれになりながら、ロレーナは屈託のない笑顔を見せる。スピラーンは妻である彼女に見惚れた。そして、何も言わず彼女を抱き寄せた。
「どうしたの?」
抱きしめるスピラーンの腕に少しの力が入る。何かを感じ取ったロレーナは静かに、待ち続けた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114