その時、ドアが勢いよく開き、KHADの数人が銃を構えて入ってくる。ブリュハノフは、ロシア語で怒声を上げた。その声で、彼らが部屋の外へ出る。 「とんだ邪魔が入ったな」 バリーが、笑みを浮かべながら言った。 「続けろ。俺たちが、何を知りたいのか・・・」 ブリュハノフが言う。 「そうだな。あんた達が欲しい情報ってのが・・・ウランだろ?」 一瞬の表情の変化を、バリーは見逃さなかった。 「何の話だ・・・?」 ブリュハノフが応えた。 「アフガンに眠る、ウラン鉱床の所在を知っているのはタリブと、この俺だけだ」 「貴様・・・何故・・・?」 バリーは、ブリュハノフに“ブラフ”をかけていた。感じていた“違和感”を確かめる為に、彼は一か八かの賭けに出たのだ。今のブリュハノフの反応で、それを確信する。 「俺はビジネスを円滑にしたいだけだ。わざわざタリブを連れてくるなんて、そんなめんどくせえ事をするよりも、ウランは俺に任せないか?」 「お前のビジネスは、“食品輸入総合商社”ではなかったのか?」 「俺が扱うのは、“戦争”だ。“食品”は、武器の隠語さ」 バリーとブリュハノフは睨み合った。ブリュハノフは、バリーの真意を確かめようとする。バリーは彼に、これからソ連が行う“筋書き”を言った。 アフガニスタンは、中東へ侵攻する際の、戦略的要衝となる。また、経済面でもソ連へ入る一つの“ルート”となるのだ。そうすれば、物資を通すだけで多額の通行税を課すことが出来る。そして、彼らの真の目的はアフガニスタンに眠る、広大なウラン鉱床だった。 「あんた達は、この国に侵攻する“大儀”が必要だ。タリブ達が暴動、反政府武装勢力となれば、彼らの鎮圧を目的とした意味で侵攻が出来る。そうだろ?」 「そこまで、貴様は読んだのか」 ブリュハノフの表情が、若干ではあったが和らいできた。 「タリブに武器を流すのは、俺の役目だ。彼らを一斉蜂起させる。そうすれば、あんた達も、現政権を助ける意味で侵攻できるわけだ。だが、そうなってからでは、あんた達は身動き取れなくなる。そこで、ウランは俺に任せないかと言ってるんだ」 ブリュハノフは、バリーに向けていた銃を下ろした。 「面白い奴だ・・・。だが、我々がお前を信用できると思うか?お前はアメリカ人だ」 「アメリカに生まれたというだけだ。俺が信用するのは、“金”だけだ」 バリーの言葉に、ブリュハノフが声を上げて笑った。 「面白い、お前を気に入ったぞ!資本主義者め!」 ブリュハノフは、ピストルを腰のホルダーへ収めた。それを見たバリーも、アノヒンに向けていたピストルを、床に置く。アノヒンが立ち上がり、バリーに殴りかかろうとしたが、ブリュハノフがそれを制した。 「しかも、このアノヒンを、こうも簡単に倒すとはな!こいつは、俺が引き抜いたスペツナズの隊員だ」 スペツナズ、ソ連の特殊任務部隊である。 「力に頼ろうとするから、俺に負けるのさ」 バリーの言葉に、アノヒンがブリュハノフの制止も聞かず、彼に殴りかかった。が、気付くとアノヒンの身体が止まった。バリーはアノヒンの額に、三本の指を当てているだけだった。 「言ってるだろ、力に頼ろうとするからだ」 そう言うと、バリーはアノヒンの右足の甲に、左足の爪先を当てた。すると、アノヒンは唸りながら、その場に倒れる。それを見たブリュハノフは、興奮を覚えた。 「さ、話を詰めようか」 バリーは笑みを浮かべた。
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