バリーの怯えた眼を見たその男が立ち上がり、後ろにいたKHAD(アフガン秘密警察)のオフィサーを退室させた。男は部屋にあった鏡に、カバーをかける。 そうすると、ドアからもう一人、別の男が入ってきた。彼はロシア語で何かを言うと、筋骨逞しい男が、倒れたバリーを起こした。 「手荒なマネをして、すまなかった」 後から入ってきた物腰柔らかな男が、笑みを浮かべた。その男は名をユーリ・ボリソヴィチ・ブリュハノフと名乗った。もう一人の筋骨逞しい男の名は、ウラジミール・イリイチ・アノヒン。 「我々は、タリブに会いたいだけなんだ」 煙草をくわえ、火を点ける。ブリュハノフは、細身で知的な男のようだ。 「会いたいだけ・・・?」 バリーが応えた。 「聞きたいことがあってね。だから、彼に会いたいんだよ」 「タ、タリブは、暴動を起こした民衆のリーダーだ・・・。あんた達は、彼を反乱分子として、本当は殺したいんじゃないのか?」 その言葉に、アノヒンが「余計なことを言うな」と怒鳴って、バリーを殴る。ブリュハノフは、それを制した。 「君に、タリブを連れてきて欲しいだけなんだ」 ブリュハノフは、柔らかな笑みを浮かべる。その顔を見るなり、バリーは笑いを堪えることが出来なくなった。彼は、声を上げて笑い始める。 「何が、おかしい?」 ブリュハノフが、笑みから怪訝な表情へと変わる。先ほどまで怯えていた男が、狂ったように笑い始めたのだから。 「いや、すまんね。あんたの“聞きたい事がある”というのは、どうも本音のようだ」 バリーが不敵な笑みを浮かべ、話を続けた。 「あんたのパンチ、痛かった。お陰で、奥歯が折れちまったようだ」 バリーはアノヒンを見上げ、折れた奥歯を吐き出す。 「貴様・・・何者だ・・・?」 ブリュハノフが言う。 「さっきから言ってるだろ。俺は、タダのビジネスマンだって」 バリーの目の前で、アノヒンは腰のホルダーから銃を取り出し、銃口を彼に向ける。が、瞬時にアノヒンの腕をひねり上げ、その身体は地面に叩きつけられた。 ブリュハノフもアノヒンも、何が起こったか理解できなかった。 気付くと、倒れたアノヒンのこめかみに、バリーが銃口を突きつけている。咄嗟にブリュハノフも、ピストルをバリーに向けていた。 「いつの間に手錠を・・・?」 ブリュハノフが小さく呟いた。 「企業秘密さ」 バリーの瞳には、焦りも何も無い。ブリュハノフは混乱した。 「貴様・・・CIAか?」 「奴らとは、何度か取引しただけだ。それより、あんた達はKGBだろ?」 その言葉に、ブリュハノフもアノヒンも口を閉ざした。 「図星のようだな。あんた達が出てくるのを、俺は殴られても、じっと耐えて待ってたんだ」 「俺たちを、待ってた・・・?」 ブリュハノフが応えた。 「あんた達と、取引をしたくてね。あんた達が、タリブに聞きたいことってのは・・・」
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