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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第170回   170
FRB・連邦準備制度理事会。
1929年に起こった世界恐慌の対策として設立された、中央銀行制度を司る企業体である。
「FRBは、議会の承認を得なくても、予算をどれだけでも使うことが出来るんだ。利率も物の値段も、たった一握りの人間だけが、その価値を決定する。こんな不合理なことがあるか?」
バリーは、その言葉に自分の記憶を辿った。FRBを設立したJ・P・モルガンは、南北戦争で財を成した「死の商人」だった。
「今回のベトナム戦争も、あの多大な戦費を支出したのは、FRBだ。国内では、早くから反戦運動が活発化していたというのに」
「FRBがトップにあれば、マネーロンダリング(資金洗浄)も可能という訳か・・・」
“影の政府”が、確かに闇で蠢いている。その気配は感じ取っていたが、今の話で、その輪郭が浮かび上がってきた。
「あともう一つ、マネーロンダリングに最適なものがあるんだ」
テッドの言葉に、バリーは思い当たる節があった。
「不動産投資か?」
「さすがだな。その通りだ」
バリーは大学時代、バブルの景気動向を調べていたことがあった。
「戦争の後には、必ず不動産バブルが来る。そうか・・・不動産投資には、規制が無いからな・・・」
バリーが呟いた。
「そうだ。数ヵ月後には、サイゴンが落ちる。不動産投資で、マネーロンダリングが行われる。機関投資家も、それに乗っかるんだ。だから、必ず不動産バブルが来る。君も、投資してみたらどうだ?確実に、不動産は上がる。レバレッジさ」
「インサイダーだな」
「だが、皆やってる」
バリーは、笑みを浮かべる。
戦争勃発の原因には、宗教対立、民族対立、思想対立があるが、根本的なものは全て“経済不安”から来ていた。
1973年にベトナム戦争「終結宣言」が出され、アメリカの兵器産業は需要が減り、景気が低迷し始めた。このレバノンでも、兵器屋のセールスマンが街中に溢れていた。「死の商人」はハイエナのように、世界中で“血の臭い”を嗅ぎつけていたのだ。
「分かってはいたが、最高の収入源が、“戦争”というわけか・・・」
「“奴ら”は必ず、戦争の“火種”を作る。小さな火種でも、大きくするのだ。いくらでも予算を使える、CIAを使ってな」
バリーは吸っていた煙草を灰皿に押し付け、その“火種”を消した。
「そうすると、その“CENTAC”が次に狙う戦地は、自ずと分かるということか・・・」
そう言いながら、また煙草をくわえた。
「そうだ。“火種”は沢山ある。このレバノン然り、イラン・イラク然り。だが“CENTAC”が狙うのは、ただ一つだ・・・」
バリーはその煙草に、火を点ける。
「黄金の三日月地帯・・・アフガニスタンだな」


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