吸っていた煙草から、灰がこぼれ落ちた。 「もう俺は、じいさんとは関係無い」 「それは、どうかな?」 テッドが、笑みを含めた声で応えた。 「デボアは、君を気に入っているようだ」 「興味無いね。第一、“デボア家”って何だ?軍産複合体か?」 バリーはクサラックを飲み干した。 「君が当主の座に座れば、世界の真実が分かるさ」 「全く・・・どいつも、こいつも同じことばかり言いやがる」 そう言うと、バリーはもう一本煙草を取り出し、口にくわえた。 「君に渡した情報は、“真実”の一つに過ぎない」 煙草に火を点ける。 「国際麻薬組織、“CENTAC”か・・・。まぁ、にわかには信じられんがな」 「君の気持ちも分かる。確かに、あの書類だけでは確証が無い」 マイクロフィルムに綴られていた“真実”。 それは、ワシントンの司法当局に存在する、“CENTAC”という国際麻薬組織の組織相関図だった。そこには、実在する人物の名前が書かれていた。 「本当に“存在”するのか?」 「“存在”自体、ごく一部の人間しか知らない」 テッドは、話を続けた。 「だが、君も“CENTAC”に介入したことがあった筈だ。ベトナム従軍時にな」 瞬時に、バリーの記憶に閃光が走った。 「あれは、CIAがCIDG計画でやっていた事だ」 「そのCIAに指示を出していたのが、“CENTAC”さ」 テッドは、ベトナムで生アヘンが10kg400から600ドルだったのが、アメリカに入るときには1kgで18000から27000ドルに、跳ね上がっている金額を言う。 「ベトナムから、アメリカに入るまでに、ざっと450倍だ。異常な数字だよ。麻薬取引(ドラッグ・トレード)は、重要な資金源の一つだ。アメリカがベトナムに介入したのは、全てはゴールデン・トライアングル(黄金の三角地帯)が欲しかったからさ」 マイクロフィルムには、“CENTAC”の資金統計額も載っていた。“CENTAC”が生み出した麻薬取引(ドラッグ・トレード)の総計資金は、ゼネラル・モーターズ、フォード、クライスラー、USスチールを合わせた収益を上回っている。これは、驚くべき数字だった。 「それが“真実”だとして、連邦政府は何故それに気付かない?マネーロンダリングは、必ずどこかで入る筈だ。それだけの額が入れば、銀行が黙っちゃいないだろう」 バリーが言った。それに対し、テッドが即座に応える。 「ダラス・NY・サンフランシスコの、連邦準備銀行(地区銀行)を調べてみろ。あそこでマネーロンダリングが集中して行われている」 「分からないな・・・。そんなことをすれば、FRBから査察が入るだろう?」 「査察なんて入るものか。“奴ら”が、アメリカ国民から搾取した国税を、好き勝手に使えるように作られた機関、それが、FRBだからだ」
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