車は街の大通りを抜け、41号線に乗ろうとしたところで、完全にシンディを巻いたようだった。戦場でいつも沈着冷静なクルーエルが、バリーの運転に呼吸を乱していた。 「お前はこれくらいで、ヘバっちまうようなヤツだったか?」 クルーエルはバリーを見た。彼は大口を開けて笑っている。 「それは、俺が聞きたい・・・。あんたこそ、そんな性格だったか?」 とクルーエルは心の中で、バリーに問いただしていた。
PFCミリオン・オリーブ・パークを通り、イースト・オハイオ・ストリートから、埠頭に出る。そこには様々な倉庫群が立ち並んでいた。その中の倉庫の前に停まり、二人は車を降りた。バリーは厳重にしていた倉庫の鍵を開け、中に入る。 「これが、俺が扱う“商品”だ」 薄暗い倉庫の中には、木箱が積み上げられている。バリーは、その中の一箱を空けた。中から何か黒くて丸いものを掴み、それをクルーエルに投げる。それを見た瞬間、クルーエルは血の気が引いた。 「こ、これは・・・!」 「それは、“パイナップル”」 手にした黒い物、ハンド・グレネード(手榴弾)だった。 バリーは、また違う箱を開ける。中から、M16アサルトライフルを取り出し、弾丸を装填、構える。 「これは、“ジャイアント・キャベンディッシュ”」 「何だ、それ?」 クルーエルが言う。 「“バナナ”だ」 その一言で、クルーエルはバリーが取り扱っている“商品”を理解した。 「“食品”ってのは、武器の隠語だったのか・・・!」 つまりは、武器取引を意味していた。 「死の・・・商人って訳か・・・!」 バリーは仕事の概要を説明した。 「武器を売るだけでは駄目だ。マーケティング戦略として、売る相手に“使い方”もオプションとして付ける」 「武器を売る相手に、それを使いこなせるように“訓練”するということか」 「そうだ」 バリーは続けた。 「あと、現地で兵士を雇う。訓練し、現地の戦争に参加させる。兵士のアウトソーシング(外部業務委託)も兼ねている。俺たちは、そのコントラクター(面接官)もやる」 クルーエルは即座に応えた。 「マーセナリー(傭兵部隊)・・・」 「そうとも言うな」 だが、クルーエルはもう一つの疑問が拭えない。それを、バリーに問いかけた。 「ガーツは何故シンディを使って、あんたを監視してるんだ?」 バリーは頭を掻いた。 「奴とは、色々あってな・・・。奴の“頼みごと”を、俺が引き受けるハメになったんだ」 「あんな奴の言うことを聞くのか?」 クルーエルの眉間にしわが入る。 「俺も奴は気に入らんが、俺たちが“力”をつけるまでの間だ。少しだけ、我慢しろ」 バリーは、また緩やかな笑みを浮かべた。それは、ベトナムでよく見せていた笑みだった。 「どうだ、もし引き返すのなら、今のうちだぞ」 クルーエルはバリーを見た。この男は、たまに不可解な行動をするが、彼はバリーを信用していた。 「こんな仕事を、待っていた」 バリーは彼に握手を求めた。 「よし、頼むぞ」 煙草をくわえると、バリーが振り返る。 「言っておくが、さっきの事務所でむやみに電話は使うなよ。シンディが盗聴器をしかけているからな」
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