デイビッド・クルーエルはベトナムから帰還し、アイダホに戻って3年が経っていた。 彼は農夫だった父親の後を継ぎ、農業を営んでいた。ハイスクールの同級生と結婚し、息子と娘を授かり、幸せな生活を送っていた。 しかし、彼はその生活に空しさを感じていた。 元々妻が妊娠しなければ、ベースボールの選手だった彼はUCLAに進学する予定だった。その為、若かった彼は単調な毎日に嫌気がさし、妻の小言に苦痛を感じ、夢も無く死んでいく自分を恐れた。 そんな時、彼はベトナム戦争に志願することを決意する。 「今の俺は、本当の俺じゃない」 それが、ベトナム戦争に志願する口実として、彼の妻に言った一言だった。無論、妻は反対した。彼が戦死すれば、誰がこの農場を営むのか。子供たちの養育はどうするのか。だが、若かった彼は自分の意見を通した。 1年経ったら、戻ってくる。 そう言ってアイダホを抜けたが、彼は3年も帰らなかった。 彼の妻は、帰還する前に新しい男を作り、子供を連れてアイダホを出た。クルーエルは悲しまなかった。むしろ、彼は喜んだのだ。両肩に乗っていた重荷が、跡形も無く消えたのだ。 ベトナム戦争に志願し、その身体能力の高さと、処理能力の高さから、彼は第4師団LRPに所属し、バリー・タウバー率いるSOGに入った。 71年にラオス侵攻作戦に参加し、彼は激戦を生き抜いた。精も根も尽き果てた彼に待っていたのは、帰還兵に対する人々の“冷酷”な眼だった。 彼は歓迎されることも無く、帰還兵というだけで蔑まれ、軍服に唾を吐かれた。 クルーエルは、この現実に戸惑った。そしてそれは、憎しみへと変わっていった。その憎しみは、自分へと向けられた。 夜、眠れない苦しみから、酒に溺れた。 働く気力も無くなり、収入が滞った上、受け継いだ農場を手放すことになった。 彼の両親も他界しており、彼は財産も家族も、無くしてしまったのだ。 そんな時のことだった。
その日も、いつものバーで朝から飲んでいた。カウンターには、二本のボトルが空になっている。 「おいデイビッド、いい加減金も無いなら、帰ってくれ!」 顔馴染みのバーテンの男が、怒声を上げる。 「今日の分くらいは、払える・・・。もう少し、飲ませてくれ・・・」 クルーエルはそれに応えた。 「駄目だ、帰れ!」 その時、カウンターの上に200ドル札をバーテンに渡した男がいた。 「俺が奢ってやる。そいつに、飲ませてやってくれ」 バーテンはその金に頷き、何も言わなくなった。 クルーエルは、隣に座った男を見上げた。アルコールによる眠気で眼が霞んで、その男が見えなかった。眼を凝らし、男を見る。 「あ・・・あんたは・・・!」 「久しぶりだな、デイビッド」
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