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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第153回   153
バリーとジョージは教会の椅子に座り、アンが眠る棺を前に話していた。
「検死の結果は、心臓への一突きで、即死だそうだ」
「即死・・・?」
バリーが応えた。
「犯人は?」
そう言うと、ジョージは分からないと俯いた。
「だが、必ず捕まえてやる」
バリーは、何も言わなかった。
犯人は、銀のナイフの持ち主だった。
自分を引き入れる為に、アンジェリアを殺した。バリーは、何も言わなかった。
二人の間に、僅かな沈黙が生まれた。その沈黙を打ち破ったのは、ジョージだった。
「あの日から、俺はずっとお前を憎んでた」
バリーは、何も言わなかった。
「俺も、アンも、お前は皆を裏切ったんだと、そう思ってた」
ジョージは、アンの眠る棺を見上げた。
「だが、アンの様子を見ていて、その考えが間違っていたことに、気付いたんだ」
それ以上、ジョージは何も言わなかった。何も、言えなかったのだ。それを口にすることで、全てが終わってしまう気がしたからだった。その気持ちを察したのか、バリーが口を開いた。
「アンが生まれて初めて俺の名を呼んだとき、本物の天使が降りて来たって、そう思ったんだ」
アンは、バリーにとって特別な存在だった。彼が正気を保ってきたのは、彼女の存在があったからこそだった。その言葉で、バリーがアンを女として愛していたことを確信した。
「なあジョージ、スピラーン神父は、俺を許さないだろうな」
ジョージはバリーの横顔を見た。
「アンも、お前も父さんの子供なんだ。何があっても、父さんは許してくれる」
バリーはずっとアンの棺を見ていた。
「お前はいつもそうだ。全て自分で抱え込もうとする。お前の悪い癖だ」
バリーは、そのまま押し黙った。奴らは、自分の大切な存在を殺そうとする。ジョージに助けを求めれば、彼も死なせることになる。その事実は、明白だった。
「もう、お前だけの問題じゃないんだ。俺の問題でもある」
ジョージは、その手に拳を握った。
その時、奥の執務室から神父が出てきて、ジョージにFBI本部から連絡が入ったと告げた。ジョージは席を立ち上がると、バリーが呼び止めた。
「ジョージ」
ジョージが振り返る。
「今度、俺に会うときは、必ず俺を撃て」
一瞬、ジョージはバリーの言葉が理解できなかった。
「お前・・・何を言ってるんだ・・・?」
「いいか、絶対に、ためらうな」
バリーはジョージを見据える。その瞳に、迷いは無かった。ジョージは真意を読み取ろうとするが、それを垣間見ることが出来なかった。
奥の執務室からもう一度神父が、ジョージを呼ぶ。彼は仕方なく、奥へと消えていった。
その姿を見送ると、バリーは立ち上がって、アンジェリアの顔を覗き込んだ。
彼女の冷たくなった頬に触れると、彼は誰にも告げたことの無い言葉を、彼女の耳元で囁いた。
「愛してる。今までも、これからも・・・」
三度目のくちづけと共に・・・。

ジョージは受話器をとる直前、バリーの言ったことを思い起こした。
「まさか・・・」
バリーは、アンジェリアを殺した犯人を知っているかもしれない。彼の不可解な言動は、既に犯人を知った上でのものだった。ジョージは急いで礼拝堂へ向かう。
しかし、そこにバリーの姿は無かった。


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