バリーとジョージは教会の椅子に座り、アンが眠る棺を前に話していた。 「検死の結果は、心臓への一突きで、即死だそうだ」 「即死・・・?」 バリーが応えた。 「犯人は?」 そう言うと、ジョージは分からないと俯いた。 「だが、必ず捕まえてやる」 バリーは、何も言わなかった。 犯人は、銀のナイフの持ち主だった。 自分を引き入れる為に、アンジェリアを殺した。バリーは、何も言わなかった。 二人の間に、僅かな沈黙が生まれた。その沈黙を打ち破ったのは、ジョージだった。 「あの日から、俺はずっとお前を憎んでた」 バリーは、何も言わなかった。 「俺も、アンも、お前は皆を裏切ったんだと、そう思ってた」 ジョージは、アンの眠る棺を見上げた。 「だが、アンの様子を見ていて、その考えが間違っていたことに、気付いたんだ」 それ以上、ジョージは何も言わなかった。何も、言えなかったのだ。それを口にすることで、全てが終わってしまう気がしたからだった。その気持ちを察したのか、バリーが口を開いた。 「アンが生まれて初めて俺の名を呼んだとき、本物の天使が降りて来たって、そう思ったんだ」 アンは、バリーにとって特別な存在だった。彼が正気を保ってきたのは、彼女の存在があったからこそだった。その言葉で、バリーがアンを女として愛していたことを確信した。 「なあジョージ、スピラーン神父は、俺を許さないだろうな」 ジョージはバリーの横顔を見た。 「アンも、お前も父さんの子供なんだ。何があっても、父さんは許してくれる」 バリーはずっとアンの棺を見ていた。 「お前はいつもそうだ。全て自分で抱え込もうとする。お前の悪い癖だ」 バリーは、そのまま押し黙った。奴らは、自分の大切な存在を殺そうとする。ジョージに助けを求めれば、彼も死なせることになる。その事実は、明白だった。 「もう、お前だけの問題じゃないんだ。俺の問題でもある」 ジョージは、その手に拳を握った。 その時、奥の執務室から神父が出てきて、ジョージにFBI本部から連絡が入ったと告げた。ジョージは席を立ち上がると、バリーが呼び止めた。 「ジョージ」 ジョージが振り返る。 「今度、俺に会うときは、必ず俺を撃て」 一瞬、ジョージはバリーの言葉が理解できなかった。 「お前・・・何を言ってるんだ・・・?」 「いいか、絶対に、ためらうな」 バリーはジョージを見据える。その瞳に、迷いは無かった。ジョージは真意を読み取ろうとするが、それを垣間見ることが出来なかった。 奥の執務室からもう一度神父が、ジョージを呼ぶ。彼は仕方なく、奥へと消えていった。 その姿を見送ると、バリーは立ち上がって、アンジェリアの顔を覗き込んだ。 彼女の冷たくなった頬に触れると、彼は誰にも告げたことの無い言葉を、彼女の耳元で囁いた。 「愛してる。今までも、これからも・・・」 三度目のくちづけと共に・・・。
ジョージは受話器をとる直前、バリーの言ったことを思い起こした。 「まさか・・・」 バリーは、アンジェリアを殺した犯人を知っているかもしれない。彼の不可解な言動は、既に犯人を知った上でのものだった。ジョージは急いで礼拝堂へ向かう。 しかし、そこにバリーの姿は無かった。
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