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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第147回   147
「バリー・・・」
バリーは、アンからその瞳を逸らした。
「私、今でも貴方のこと・・・」
「アン・・・」
ゆっくりと首を横に振り、碧の瞳を見る。
「それ以上は、駄目だ」
アンはそれを押し切って、言葉を続ける。
「貴方の事、愛してるの」
彼女は立ち上がり、バリーに抱きついた。バリーはその手に力を込めようとするが、抱きついた彼女を引き離した。
「俺たちは、兄妹なんだ」
「それでも、私は構わないわ」
バリーは優しく微笑む。
「俺と一緒にいても、お前は幸せになれない」
流れ出る涙を、手で拭い取る。
「お前には、未来があるんだ。子供が駄目なら、また数学を始めろよ」
アンが首を横に振る。
「アルが言ってただろ?お前は、人類に必要な存在になるかもしれないって」
「貴方に、傍にいて欲しいの」
バリーは、アンの頭を撫でた。
「そんなことを言ったら、スピラーン神父が悲しむぞ」
アンは顔を上げ、バリーを見る。
「スピラーン神父は、俺たちを命がけで守ろうとしてくれたんだ。俺は、彼とジョージを裏切ることは出来ない」
「じゃ、どうしてあの時、私に触れたの?」
核心に触れたその言葉に、バリーは次の一言が出なかった。
「あの時は、どうかしてたんだ・・・」
「どうか・・・してた?」
バリーは、自分の言った言葉が如何に愚かであるかと気付いたが、それ以上は何も言わなかった。
「パパと、同じことをしたっていうことなの?」
バリーは、沈黙を守った。その姿を見たアンは、立ち上がってこの部屋を出ようとした。バリーは彼女を呼び止める。
「どうして、怒らないんだ?」
バリーは立ち上がり、アンの傍へ寄ると、彼女の腕を掴む。
「お前は、いつもそうだ。人のことには怒るくせに、自分の事には、怒ることをしない」
「放して」
「俺に感情を、ぶつけろ」
彼女が怒りをぶつけないのは、その人も自分も傷つけてしまうかもしれないと、いつも怯えていたからだった。
「怒れ、怒ってみろ!」
掴んでいるアンの腕に、力がこもった。何度もそれに急き立てられたアンは、涙を流しながら、バリーの胸を叩いた。
「貴方なんか、嫌いよ!」
「そうだ、それでいい!」
何度もバリーの胸を叩き、彼女は声を上げて泣いた。
「やれば、出来るじゃないか!」
アンを抱きしめる腕に、力がこもる。
「腹が立ったのなら、もっと怒っていいんだ。“沈黙”は、お前自身を駄目にする」


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