「バリー・・・」 バリーは、アンからその瞳を逸らした。 「私、今でも貴方のこと・・・」 「アン・・・」 ゆっくりと首を横に振り、碧の瞳を見る。 「それ以上は、駄目だ」 アンはそれを押し切って、言葉を続ける。 「貴方の事、愛してるの」 彼女は立ち上がり、バリーに抱きついた。バリーはその手に力を込めようとするが、抱きついた彼女を引き離した。 「俺たちは、兄妹なんだ」 「それでも、私は構わないわ」 バリーは優しく微笑む。 「俺と一緒にいても、お前は幸せになれない」 流れ出る涙を、手で拭い取る。 「お前には、未来があるんだ。子供が駄目なら、また数学を始めろよ」 アンが首を横に振る。 「アルが言ってただろ?お前は、人類に必要な存在になるかもしれないって」 「貴方に、傍にいて欲しいの」 バリーは、アンの頭を撫でた。 「そんなことを言ったら、スピラーン神父が悲しむぞ」 アンは顔を上げ、バリーを見る。 「スピラーン神父は、俺たちを命がけで守ろうとしてくれたんだ。俺は、彼とジョージを裏切ることは出来ない」 「じゃ、どうしてあの時、私に触れたの?」 核心に触れたその言葉に、バリーは次の一言が出なかった。 「あの時は、どうかしてたんだ・・・」 「どうか・・・してた?」 バリーは、自分の言った言葉が如何に愚かであるかと気付いたが、それ以上は何も言わなかった。 「パパと、同じことをしたっていうことなの?」 バリーは、沈黙を守った。その姿を見たアンは、立ち上がってこの部屋を出ようとした。バリーは彼女を呼び止める。 「どうして、怒らないんだ?」 バリーは立ち上がり、アンの傍へ寄ると、彼女の腕を掴む。 「お前は、いつもそうだ。人のことには怒るくせに、自分の事には、怒ることをしない」 「放して」 「俺に感情を、ぶつけろ」 彼女が怒りをぶつけないのは、その人も自分も傷つけてしまうかもしれないと、いつも怯えていたからだった。 「怒れ、怒ってみろ!」 掴んでいるアンの腕に、力がこもった。何度もそれに急き立てられたアンは、涙を流しながら、バリーの胸を叩いた。 「貴方なんか、嫌いよ!」 「そうだ、それでいい!」 何度もバリーの胸を叩き、彼女は声を上げて泣いた。 「やれば、出来るじゃないか!」 アンを抱きしめる腕に、力がこもる。 「腹が立ったのなら、もっと怒っていいんだ。“沈黙”は、お前自身を駄目にする」
|
|