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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第145回   145
バリーは、ウィルキンソンが元締めをしている、イエローキャブの仕事を始めた。
伸びきった髪と髭を切り、バリーはその姿をスーザンに見せた。
「おや、さっぱりして、いい男になったねえ!」
スーザンは満面の笑みを浮かべ、バリーは少し照れていた。
バリーは除隊していたのにも関わらず、ウィルキンソンを「大尉・キャップ」と呼んでいたが、スーザンに対しては「ママ」と呼んでいた。彼女を、母親のように慕った。
イエローキャブの仕事は、すぐに慣れた。昼間ではなく、バリーは専ら夜に車を走らせた。すると“夜、眠る恐怖”から逃れたのか、バリーはアルコールを飲むことも、自然に止められるようになっていった。ブロンクスは夜間、治安の悪い場所だったが、バリーにとってベトナムよりは“平和”な場所だった。

バリーは仕事の合間を縫って、死んだ者達へ逢いに、各地へ赴いた。
スピラーン神父、ヘザー、クライトマン、デイビス、ジョン。
彼らの墓へ、花を手向けた。それだけで、バリーの心の中に支えていたものが、少し取れたような気がしていた。

日に日に、人間らしい顔に戻っていくバリーを見て、ウィルキンソンはイェール大学に復学し、ロースクールへ行かないかと、バリーに話を持ちかけた。最初、彼は迷っていたが、バリーはイェール大へ復学し、卒業の為の最終試験を受ける。殆ど単位は取っていたので、猛勉強の末、大学は無事卒業となった。そしてロースクール進学試験のLSATを受けた後のことである。ウィルキンソンが、こめかみにリボルバーのトリガーを引き、自らの人生に幕を閉じた。
切り落とされた両足、不自由な身体に嫌気がさしたと遺書にあった。スーザンに迷惑をかけたくないと。そして、最後に「デレックに逢いに行く」と書き遺していた。
バリーにも、ウィルキンソンは手紙を遺していた。ベトナム時代の思い出を語り、彼はバリーを息子のように想っていたのだとあった。その手紙の最後には、「自分の人生を生き抜け」と。
バリーはその手紙で、合格したイェール大のロースクールへ行く為、NYを離れる決心がついた。

そんな時のことだった・・・。


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