翌朝、留置場から出たバリーは、酒を手に入れようと街の酒場に向かおうとした。 だが、前日から続いていた身体の震えと、激しい頭痛が止まらなかった。二日酔いのせいなのか、また以前のような眩暈もしている。 通りをふらつきながら歩いていた、バリーが立ち止まった。全身に、冷たい汗が浮かんでいるのが分かった。激しい吐き気に見舞われ、たまらず膝をついた。通りを歩いていた人々の声が遠のき、バリーはそのまま気を失ってしまった。
一瞬の閃光と共に、こめかみを撃ちぬかれた黒人の男が見えた。 一瞬の閃光と共に、見慣れた男が、自分にライフルの銃口を向けている。 一瞬の閃光と共に、黒人の士官が、自分に銃口を向けている。傍には、自分が殺そうとしていた男が座っていた。 士官の黒人が、向けていた銃の引き金を引く。
その銃声に驚き、目を見開いた。 そこには、無機質な白い天井見える。少し視線をずらすと、点滴がスタンドから、ぶら下がっていた。バリーは腕に刺さっていた、点滴の針を抜こうとした。それを、白い手の女が止める。その女の顔を見た。 「点滴を抜いたら、殺すわよ」 サラは優しく微笑みかける。 「サラ・・・」 バリーは彼女の手を取り、彼女の存在を確かめようとする。その時、目の前に一瞬の閃光が走り、こめかみを撃ちぬかれた黒人の男が見えた。バリーは呻き声を上げ、頭を押さえた。 「ミスター・タウバー、しっかりしてください!」 頭を押さえるバリーの耳元で、女の声が聞こえる。バリーはその女を見た。彼女は、サラではなく、看護師のようだった。 また、一瞬の閃光が走る。黒人士官が自分に銃口を向けている。バリーは呼吸を乱し、あまりの頭痛に、いつの間にか、気を失っていた。
目を覚ますと、また同じ無機質な白い天井が見えた。今度は鼻に、酸素吸入器が着けられている。同じ点滴スタンドが見え、胸には心電計の電極が取り付いている。そこへ白髪の医師が部屋に入り、バリーに「アルコール依存症」であると告げた。これ以上、アルコールを多量に摂取すると、命も亡くしかねないと付け加えた。 医師が病室を出た後、バリーはふと、自分が無くしていた記憶を、取り戻していたことに気付いた。激しい頭痛が治まっていたせいもあった。
ヘイズは自分を殺そうとしていた。ジョン・マッキンタイアがヘイズに射殺され、その復讐にガーツを暗殺しようとしていた。だが、それはウィルキンソンに阻まれてしまう。 それどころか、クライトマンの死、目の前で撃ち殺されたデイビスの死も思い出していた。全ての記憶が、バリーの頭に流れ込んだ。 バリーはその記憶に絶え切れず、病院から抜け出し、酒に頼る為に酒場へと向かった。
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