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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第134回   134
左肩を撃たれた後の記憶が、定かではなかった。
バリーはニャチャンに戻るまでの1ヶ月、動物の生肉を食べカンボジアから徒歩で帰還。ヘイズに撃たれた右肩の応急処置と、抗生物質を打っていたものの、彼の身体は衰弱しきっていた。ウィルキンソンに左肩を撃たれた反動で、循環性ショックに陥る。血圧が低下し、一時は生命に危険が迫ったが、有効な抗生物質を投与し、大量の輸血を施した為、一命を取り留めていた。
重症となっていたバリーは、ニャチャンのサン・ベイアメリカ軍基地より、サイゴンにあるアメリカ軍のサイゴン病院に身柄を移される。そこから容体が安定すれば、ベトナムを離れ、アメリカ・ハワイ州オワフ島にあるトリプラー陸軍病院に移る予定となっていた。

サイゴン病院に移ってからの数日間、バリーは意識を失くしていた。

目を覚ますと、白い天井が見えた。霞んで見えにくいものだったが、シーリングファン(天井扇)が回っている。同時に強いアルコールの臭いと、呻き声が聞こえてきた。
首をゆっくり左に向けると、病院用のベッドに右足を失くした男が眠っている。右には全身を包帯で巻かれた男が寝ていた。
「ここは・・・?」
バリーが小さな声で呟いた。だが、誰もそれに応えるものはいなかった。身体を動かそうとするが、全くいうことがきかない。腕を上げようとすると、肩に強烈な痛みが走る。痛みをこらえながら、腕に突き刺さっていた点滴を引き抜こうとしたとき、誰かがそれに応えた。
「ここは、サイゴン陸軍病院よ、ルテナン」


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