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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第133回   133
ナイフを持っていたはずの手に、激しい衝撃がかかる。その直後、乾いた銃声が響いた。
ナイフが宙を舞い、それは床に突き刺さる。

「動くな!」
見上げると、ドアでウィルキンソンがピストルを構えていた。何が起こったのか把握できないガーツは、背後で立っていた男を見る。手から血を流していた男は、ガーツを睨んでいた。ヘルメットの奥から、水色の眼光が鋭く突き刺さる。
「お前は・・・!」
ガーツの額から、冷たい汗が流れ落ちた。床に突き刺さったナイフを見る。それで、自分が殺されかけていた事実を把握した。
「タウバーだな!」
ピストルを構えているウィルキンソンが言う。その男・バリー・タウバーがヘルメットを取り、それを脱ぎ捨てた。
「何故、止めた!?」
バリーが怒りを露にする。
「何をしている!早く撃て!」
怯えるガーツがデスクで叫んだ。ウィルキンソンはガーツを睨み付ける。
「ジョンもデイビスも、こいつとヘイズに殺されたんだ!」
バリーの言葉を聞いても、ウィルキンソンは微動だにしなかった。
「全ての元凶は、この男だ!」
ウィルキンソンが放った銃声を聞きつけ、ガーツのオフィスに二人のMPが駆けつけた。その隙を突き、バリーが隠し持っていた、もう一つのナイフでガーツの頚動脈を狙う。
ウィルキンソンが咄嗟に反応し、バリーに向けてもう一度引き金を引いた。弾丸は左肩に命中し、バリーは後方に叩きつけられる。
「殺せ!この男は私を殺そうとしたんだ!」
ガーツの声に促され、二人のMPはM16を構えながら、倒れたバリーに近付く。
「待て!」
ウィルキンソンがMPを制止させた。彼はガーツを睨みながら、近寄ると、その耳元で囁いた。
「ここでタウバーを殺せば、貴方の悪事を、全て白日の下にさらけ出しますよ・・・?」
「貴様・・・何を知っている・・・?」
「タウバーは、私が処分します。そうすれば、私は“敢えて”ラオス侵攻作戦に参加しましょう」
ガーツはウィルキンソンの目を見た。バリーを見逃せば、全てを“知っている”自分は戦死という形で“黙認”しようと告げたのだ。
「貴様・・・!」
ラオス侵攻作戦に刈り出されるウィルキンソンが、自ら“捨て駒”になることを、悟っていた。ガーツは拳を握る。その手は怒りと、恐怖で無様に震えていた。
「勝手にしろ!」
ガーツはウィルキンソンを睨みつける。
「タウバー中尉は帰還する途中で、NVA(北ベトナム軍)に狙撃され、負傷したのだ!いいな!」
ウィルキンソンはガーツを睨み返したまま、二人のMPに一喝した。


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