ナイフを持っていたはずの手に、激しい衝撃がかかる。その直後、乾いた銃声が響いた。 ナイフが宙を舞い、それは床に突き刺さる。
「動くな!」 見上げると、ドアでウィルキンソンがピストルを構えていた。何が起こったのか把握できないガーツは、背後で立っていた男を見る。手から血を流していた男は、ガーツを睨んでいた。ヘルメットの奥から、水色の眼光が鋭く突き刺さる。 「お前は・・・!」 ガーツの額から、冷たい汗が流れ落ちた。床に突き刺さったナイフを見る。それで、自分が殺されかけていた事実を把握した。 「タウバーだな!」 ピストルを構えているウィルキンソンが言う。その男・バリー・タウバーがヘルメットを取り、それを脱ぎ捨てた。 「何故、止めた!?」 バリーが怒りを露にする。 「何をしている!早く撃て!」 怯えるガーツがデスクで叫んだ。ウィルキンソンはガーツを睨み付ける。 「ジョンもデイビスも、こいつとヘイズに殺されたんだ!」 バリーの言葉を聞いても、ウィルキンソンは微動だにしなかった。 「全ての元凶は、この男だ!」 ウィルキンソンが放った銃声を聞きつけ、ガーツのオフィスに二人のMPが駆けつけた。その隙を突き、バリーが隠し持っていた、もう一つのナイフでガーツの頚動脈を狙う。 ウィルキンソンが咄嗟に反応し、バリーに向けてもう一度引き金を引いた。弾丸は左肩に命中し、バリーは後方に叩きつけられる。 「殺せ!この男は私を殺そうとしたんだ!」 ガーツの声に促され、二人のMPはM16を構えながら、倒れたバリーに近付く。 「待て!」 ウィルキンソンがMPを制止させた。彼はガーツを睨みながら、近寄ると、その耳元で囁いた。 「ここでタウバーを殺せば、貴方の悪事を、全て白日の下にさらけ出しますよ・・・?」 「貴様・・・何を知っている・・・?」 「タウバーは、私が処分します。そうすれば、私は“敢えて”ラオス侵攻作戦に参加しましょう」 ガーツはウィルキンソンの目を見た。バリーを見逃せば、全てを“知っている”自分は戦死という形で“黙認”しようと告げたのだ。 「貴様・・・!」 ラオス侵攻作戦に刈り出されるウィルキンソンが、自ら“捨て駒”になることを、悟っていた。ガーツは拳を握る。その手は怒りと、恐怖で無様に震えていた。 「勝手にしろ!」 ガーツはウィルキンソンを睨みつける。 「タウバー中尉は帰還する途中で、NVA(北ベトナム軍)に狙撃され、負傷したのだ!いいな!」 ウィルキンソンはガーツを睨み返したまま、二人のMPに一喝した。
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