その生き物は、水面から顔を出し「カカカ・・・」と鳴いた。 「俺を助けたのは、お前か?」 その言葉に答えるように、それは前ビレを水面に出すと、水面を叩く。その白い生き物は、トンレサップ湖とメコン川に生息するカワイルカ(ゴンドウ)だった。 「何故、俺を死なせないんだ?」 カワイルカは、黙ってバリーを見つめる。そしてまた「カカカ・・・」と鳴いた。 「生きて、何になる?」 カワイルカは身体の向きを反転させ、尾ビレを水面に叩きつける。激しい音が響くと共に、バリーに川の水が大量に降りかかった。 「わかった、やめろ!」 あまりの大量の水に、バリーが言った。その声で、カワイルカは再び身体を反転させ、バリーの顔を見つめる。その澄んだ瞳に、バリーは声を上げて哄笑した。 「わかったよ。お前に貰った命だ。有効に使う」 バリーが立ち上がる。もう一度、カワイルカを見た。 「まだ、やることがあるんだ。それまで、死ぬわけにはいかないよな・・・」 バリーは装備を確認する。腰にはピストル、サバイバルナイフだけが残っていた。それだけあれば、充分だ。 「あの二人だけは・・・必ず・・・」 バリーの瞳に、また冷徹な光が宿り始めた。
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