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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第130回   130
その生き物は、水面から顔を出し「カカカ・・・」と鳴いた。
「俺を助けたのは、お前か?」
その言葉に答えるように、それは前ビレを水面に出すと、水面を叩く。その白い生き物は、トンレサップ湖とメコン川に生息するカワイルカ(ゴンドウ)だった。
「何故、俺を死なせないんだ?」
カワイルカは、黙ってバリーを見つめる。そしてまた「カカカ・・・」と鳴いた。
「生きて、何になる?」
カワイルカは身体の向きを反転させ、尾ビレを水面に叩きつける。激しい音が響くと共に、バリーに川の水が大量に降りかかった。
「わかった、やめろ!」
あまりの大量の水に、バリーが言った。その声で、カワイルカは再び身体を反転させ、バリーの顔を見つめる。その澄んだ瞳に、バリーは声を上げて哄笑した。
「わかったよ。お前に貰った命だ。有効に使う」
バリーが立ち上がる。もう一度、カワイルカを見た。
「まだ、やることがあるんだ。それまで、死ぬわけにはいかないよな・・・」
バリーは装備を確認する。腰にはピストル、サバイバルナイフだけが残っていた。それだけあれば、充分だ。
「あの二人だけは・・・必ず・・・」
バリーの瞳に、また冷徹な光が宿り始めた。


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