父親のジョナサンと母親のミミがこの屋敷に帰宅したのは、真夜中を過ぎてからのことだった。二人は何の言葉も交わさないまま、ミミは寝室に、ジョナサンは書斎へと向かった。 ミミがマーサを呼ぶ声が、屋敷の中を響き渡る。バリーはベッドの中で、部屋の外に存在する大人たちの気配を感じ取ろうとしていた。暗闇の中でじっと目を凝らし、微かな足音に聞き耳を立てた。 次の瞬間、何かを感じ取ったバリーはシーツを頭から被り、ベッドの中に潜り込んだ。 ドアが開き、外からタキシードを着た男が入ってきた。父親のジョナサンだった。壁にある照明のスイッチを点けると、ジョナサンは低い声で言った。 「書斎に来なさい」 柔らかな口調だったが、明らかに怒りの篭った声だった。バリーがシーツから顔を出す前に、ジョナサンは部屋を出た。 重厚なドアの向こうに、ジョナサンの書斎があった。バリーは躊躇いながらもそのドアをノックすると、中から入りなさいと声がした。中に入り、バリーはジョナサンのデスクの前に立った。目の前にはバリーと同じ黒い髪の男・ジョナサンが立っていた。彼はタキシードのネクタイを外し、乗馬用の鞭を手にした。 「今日、また神父の息子と出かけたそうだな。しかもアンジェリアまで、連れていたそうじゃないか」 バリーはその問いに対して、何も答えなかった。 「黙っていても始まらんぞ。お前を見たと、街の者が教えてくれたのでな」 バリーは視線をジョナサンと合わせようとしなかった。それは恐れでも何でも無く、父親に対する反抗の証だった。冷静を装っていたジョナサンも、バリーのこの態度に怒りを露にし、彼の襟首を掴みあげた。 「あれほど言ったのにも関わらず、お前というやつは!」 襟首が締まり、バリーの顔が苦痛に歪んだ。それでも、彼は何も応えなかった。中々自分に屈さない息子に、ジョナサンは耐え切れず鞭を振り続けた。
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