適度なバンカーを見つけると、二人は休憩を取った。バリーの傷の手当てをするためである。バリーはシャツを脱ぎ、口に枝をくわえる。ジョンはフルメタルジャケット弾をバックパックから取ると、ナイフで底蓋を外し、薬莢をバリーの銃創に降りかけた。強烈な痛みが走る。 「貫通しているようだ。止血さえすれば、問題ないだろう」 「やってくれ」 そう言うと、ジョンにジッポを渡した。 「いくぞ」 ジョンはジッポに火を点し、銃創に降りかけた薬莢に火を点けた。 その瞬間、肉が燃える臭いと、硝煙の臭いが漂う。バリーはくわえた枝を力一杯噛み締めながら、うめき声を上げた。その後、自分のバックパックから、抗生物質の注射器が入った鉄製のケースを取り出すと、自分の大腿部に突き刺す。その間、枝を噛み続けていた。
応急処置が終わり、少し水を飲んでいたとき、ジョンが徐に口を開いた。 「イカれてると思ったが、ついに仲間まで殺しにかかるとは」 バリーは水筒の蓋を閉めると、それをジョンに手渡す。 「奴は、俺を狙ったのさ」 バリーは、ジョンにそれ以上を話さなかった。ヘイズとの関係に、薄々気付いてはいたが、彼もそれ以上聞くことは無かった。 「なあ・・・」 ジョンが、再び口を開く。 「スヌールの町で、お前がした事・・・」 バリーは、下を向いていた。 「“心が幻想で満たされると、心はそれを糧にして残忍になり、それは愛よりも、憎しみの中に形を取っていく”」 どこかで、聞いたことのある詩だった。バリーは記憶の中で、その詩を手繰りだす。 「W・B・イェーツか」 「スヌールの町で立っていたお前の姿を見たとき、ずっとこの詩が頭の中で流れていた」 自分が未だに生きていることを恥じながら、バリーはいつの間にか「デボア家」という“幻想”に取り憑かれていた。デボアという“力”を手にし、「戦争を無くす為」という幻想の下、バリーは冷徹になっていった。 「お前は、何かを憎んでいるようだ。誰かを憎んでいるのか、それとも自分なのか・・・」 ジョンの言葉に、バリーは苦笑いを浮かべる。 「全部だろうな」 バリーが応えた。ジョンはバリーの顔を見る。 「あの時、殴って悪かったな」 ジョンは微笑を浮かべ、バリーに握手を求めた。差し出された手を握ろうとした瞬間、肉を突き破る鈍い音が響く。顔を上げると、ジョンのこめかみを、弾丸が貫通していた。 貫通したこめかみから、鮮血が飛び散った。ジョンは目を見開いたまま、地面に叩きつけられる。咄嗟に身を伏せ、彼の名を呼ぶが、既に絶命していた。バリーは弾道元を見る。だが、そこには何もいない。 「ヘイズ!」 バリーは冷静さを失った。
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