小船には、無線機を背負っていたヘイズが乗り込み、腹ばいになってサプレッサー(消音器)を装着したM70を構えた。バリーとジョンは銃を船に入れ、川の中へ入る。泳ぎながら小船に掴まり、口にはナイフをくわえていた。川の流れに任せ、下流に流されながら対岸を目指す。 暗闇に乗じて、三人は無事に対岸へ着く。3人は装備を整えるが、深いジャングルが広がっていた為、そこで休憩を取った。少しの音が、命取りになる為である。 翌朝、夜が明ける前に3人は進路を北西に向け、歩き始めた。陽が上り始めた頃、“それ”は突然、目の前に現れた。3人は空をジャングルの木々に囲まれた、車が2台通れるほどの、整備された“路”に出くわした。 その“路”を見た瞬間、バリーは“正義”を振りかざしたアメリカの、完全な敗北を確信する。そこには、何十台もの自転車を荷車として、一人一人の人間が物資を運んでいたのだった。驚異的な人海戦術である。彼等は自転車押して、北ベトナムからのルートを辿り、ただ黙々と数百マイルの道を歩いてきた。例え爆撃で死するとも、代わりの者が、また自転車を押していく。この物資の列は、決して絶えることがなかった。 周りを見渡すと、少し高台になった丘がある。バリーはヘイズにカムフラージュさせ、バックアップに回らせる。 手で「偵察する」とジョンに合図を送り、二人で路沿いに北上する。少し行ったところに、道沿いには、物資輸送隊のための休憩所らしき建物があった。その周辺を、AK47を抱えた兵士が立っている。その奥には、ソ連製のS-75地対空ミサイルが2基も配備されている。 バリーはジョンに手で「後方へ移動する」と合図を出し、ヘイズのいる高台へ戻ろうとしたとき、持っていた装備が木々に当たり、僅かだが音を出してしまった。 それに北ベトナム兵が気付く。彼等は何かを叫びながら、こちらに発砲してきた。バリーとジョンはすぐさま応戦し、後方へ下がる。 兵士の2人を、ヘイズが狙撃する。バリーとジョンが、ヘイズに合流しようと走った。ヘイズは援護射撃をしている。 その瞬間、バリーの“勘”が働いた。一瞬で、ヘイズの銃口が自分に向いていることを悟ったのだ。 瞬時に身をかわしたが、ヘイズが放った弾丸は、バリーの右肩を貫いた。 「ちっ!」 ヘイズが舌打ちをする。ジョンは、追ってくる北ベトナム兵を倒しながら、倒れたバリーに手を貸した。 「立てるか!?」 「ああ」 ジョンは後方の北ベトナム兵を、バリーはヘイズを撃った。だが、ヘイズはすぐに立ち去り、無線機を持って跡形も無く消えてしまった。 二人は何とか北ベトナム兵の追撃を逃れると、メコン川に向かった。
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