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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第125回   1970年9月 カンボジア”フラギング”
カンボジア侵攻が始まり、カンボジア国内は混沌と化した。シアヌークは亡命先の北京から、敵対していた筈のクメール・ルージュに共闘を呼びかけ、反旗を翻したロン・ノル率いるカンボジア政府軍とポル・ポト率いるクメール・ルージュの内戦が起こった。
一方で、北ベトナム軍は、空爆によって破壊された補給路をメコン川沿いに南下させる。
新たなホーチ・ミン・ルートが整備され始めた。

バリーのSOGはカンボジアに潜入し、整備された新たなホーチ・ミン・ルートの偵察と補給路を遮断するための空爆誘導任務がMACVから下った。偵察隊は各方面に細分化されたため、今回のチーム編成はダレン・ヘイズ、ジョン・マッキンタイアの3名のみとなった。
作戦行動は、タイニンの北東に位置する海兵隊駐屯地(マリーンズ・ファイアベース)に入り、そこからメニュー作戦の一つ「デザート作戦」で空爆が行われた、基地地域351を通り、新たに整備された補給路を偵察・爆撃を指示。そのために、今回は無線機を携行する。

装備を整えたバリーは、ブリーフィングの前に、HQの隣にあった補給テントの簡易キッチンで、ミルクチョコレートを飲んでいた。そこへ、同じく装備を整えたヘイズが現れ、隣でコーヒーを淹れていた。バリーはヘイズを呼び止める。
「お前は、いつ俺を殺しに来るつもりだ?」
熱いコーヒーをすすりながら、ヘイズが振り返った。
「あんたに、隙が出るのを待ってる」
それを聞いて、バリーが笑った。
「俺は、あと3ヶ月で除隊だ。それまでに、間に合うのか?」
「それだけあれば、充分だろう」
ヘイズが笑みを浮かべる。
「あんたには、楽に死んでもらっちゃ困る」
「お前は人間が死ぬ前の、苦しむ顔を見るのが趣味だったな」
バリーはヘイズの目を見る。最初はこの男を「イカれてる」と罵ったが、今は同調はしないものの、この男を理解していた。
「惜しいな・・・」
バリーは独り言のように呟く。
「お前は、イカれてる部分を除けば、優秀なんだがな」
「それだから、ガーツは俺を選んだんだろう」
ヘイズは、バリーを消す為の指示はガーツにあるとほのめかした。だが、バリーは最初から分かっていたことだった。
「俺を殺る時は、確実に息の根を止めろよ」
バリーはヘイズを見る。
「半端なことをしたら、必ずお前と、ガーツを殺しに行くからな・・・」
ヘイズもバリーも、不敵な笑みを浮かべていた。

ブリーフィングが終わり、無線機はヘイズが携帯した。3人はヒューイに乗り込み、LZに向かう。
あの虐殺から5ヶ月が経ったが、それ以来バリーはジョンとまともに口を利かなかった。任務中は口を開くが、それが終わるとジョンはバリーと目も合わそうとしなかった。
そんな様子を見て、クルーエルは何とかジョンを説き伏せようとしたが、彼の怒りは、全く冷めなかった。バリーはクルーエルに「気にするな」と言っていた。


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