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作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第122回   122
バリーは何の躊躇いも無く、引き金を引く。乾いた銃声が響くと共に、男が倒れた。ジョンとクルーエルは、唖然とする。バリーは続けて、隣に立っていた女の頭に銃口を向ける。女は恐怖の表情を浮かべるが、また何の躊躇いも無く、バリーは引き金を引いた。女が頭から血しぶきを噴出しながら、人形のように倒れる。
「バリー、止めろ!」
ジョンが叫ぶ。第2中隊の兵士が、ジョンを銃床で殴った。彼は地面に叩きつけられる。
「あんたも、イカれてるじゃねえか!」
ヘイズが嘲笑った。だが、バリーは振り返ることも無く、3人目の老婆の頭に銃口を向け、同じように引き金を引く。4人目、5人目と、彼は次々と無抵抗の難民を撃ち殺していった。
M551の前に並んでいた17人の難民、全てバリーが撃ち殺すと、それを見ていたハルバーリンが奇声を上げる。
「第2中隊、町に潜んでいる“ベトコン”を捜し出し、皆殺しにするのだ!」
一斉に、第2中隊の兵士が町に散らばって行った。彼等は町の中心部に入り、逃げ遅れた者や、建物に隠れていた者達を、外に引きずり出しては次々に射殺していった。ある者達は女を見つけると、それが年端の行かぬ少女であっても、強姦をした後で撃ち殺す。町のあちこちで銃声と、逃げ惑う人々の絶叫が轟いていた。
「これは、掃討作戦なんかじゃない・・・単なる“虐殺”だ・・・!」
倒れていたジョンが、頭を上げる。それを見ていたクルーエルが手を貸し、彼を立たせる。ジョンはバリーを捜した。彼は、ハルバーリンの隣に立っていた。ジョンは肩を貸そうとしていたクルーエルを振り払い、バリーのもとに向かうと、彼の肩を掴んだ。
「止めさせてくれ!」
ジョンが叫ぶと同時に、彼の身体は一瞬で宙を舞う。気付くと、ジョンの身体は地面にねじ伏せられていた。
「黙ってろ!」
バリーに右腕をひねりあげられ、ジョンの顔が苦痛に歪む。
「デイビッド、こいつを抑えてろ!」
戦場では冷静なクルーエルが、バリーの命令に戸惑っていた。
「何をやってる、早くしろ!」
バリーが怒鳴り声を上げる。クルーエルは仕方なく、ジョンを抑えた。
「噂には聞いていたが、第4師団LRPも大した部隊ではないな」
それを見ていたハルバーリンが、バリーに言った。バリーは何も言い返さなかった。ジョンとクルーエルはバリーの顔を見上げるが、彼の表情は伺えない。ジョンは拳を作り、地面を何度も殴っていた。
やがて町が静まり、散らばっていた兵士たちが戻ってきた。彼等は、それぞれに何かを持っている。それをハルバーリンの前で、何かを打ちまけた。
「中佐、任務完了いたしました!」
兵士の一人がハルバーリンに敬礼をし、報告する。バリーは、打ちまけた物を見た。それは、削ぎ落とされた人間の耳や鼻だった。始めは戸惑いを感じていた兵士もいたようだが、今では皆、町を“制圧”し、歓喜に沸いている。バリーは、削ぎ落とされた耳を手に取った。どす黒い血がこびりついている。それは“ベトコン”を倒した“勲章”だった。バリーの口元に笑みが浮かぶ。
「狂ってやがる・・・」
この日、バリーのSOGを含む第12装甲騎兵連隊第2中隊が来るまでは、スヌールの町はゴム園で働く2000人の住民が、平穏に暮らしていた。彼等は、“ベトコン”ではなく、カンボジアに住むカンボジア人だった。エイブラムズが統括するMACVは、COSVN(南ベトナム中央局)など、どうでも良かったのだ。ハルバーリンは、破壊されつくした町を眺め「まるで屠殺場のようだ」と笑った。
ジョンとクルーエル、ヘイズは中隊の兵士に未だ銃を向けられている。残党がいないか確認せよとの命を受け、バリーはM16を手に、一人町の中心部へ向かった。


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