20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第121回   121
24時間が経過し、バリーのSOGと装甲騎兵第2中隊がスヌールへ向かう。ジャングルを抜け、田畑が広がり始めると、その向こうに未だ爆撃によって火の手が上がっているスヌールの町が見えてきた。無線からハルバーリンが停まれと合図が出る。バリーは命令の通り、車を停めた。その道の先には、スヌールが見える。その道から、町の人々が手荷物を抱え、逃げ始めている。バリーはCAR15を構え、彼等に銃口を向けた。同時にチームも同じ行動を取った。
銃口の先に見える人々を見たとき、バリーはある事に気付いた。
「おい、銃を下ろせ!」
バリーが振り返り、チームに命令を下す。
「何故だ?」
ヘイズが応えた。
「彼等は、難民だ。“殺気”が無い」
バリーの言葉を聞くと、ジョン、クルーエルが銃を下ろした。
「聞こえなかったのか?銃を下ろせ!」
バリーがもう一度、後ろにいたヘイズに怒鳴った。ヘイズはバリーを睨みながら、銃を下ろした。難民たちは、やがてバリー達のSOGが乗った、2台のジープを通り過ぎていく。彼等はバリー達を、疲れきった瞳で見上げながら、通り過ぎていった。年老いた者、女、子供、頭から血を流した若者。
バリーは彼らを、じっと見詰めていた。彼等は何も言わず、ただ町から逃げる。彼等が歩く音だけが、不気味に響いた。
「ホントに、難民なのか・・・?」
2台目のジープを運転していたクルーエルが、小さく呟いた。ヘイズは、後部座席にある機関銃の砲座に立ち、機関銃に触れていた。
その瞬間、轟音と共に丸い閃光が、いくつも列を成して上空を飛び抜ける。後方からM551が90mm戦車砲を、町に撃ち込み始めた。町から逃げ出していた難民たちは、一斉に叫び声を上げながら、走り始める。バリーは振り返り、走り抜ける難民たちを目で追った。
「タウバー、“ベトコン”がこちらに迫っている!奴らを撃ち殺せ!」
無線から、ハルバーリンの怒鳴り声が聞こえた。
「お言葉ですが中佐、彼等は“難民”です!」
「貴様、命令を無視するのか!?」
無線のスピーカーが割れんばかりに、ハルバーリンの大声が響いた。バリーが、それに応えようとしたとき、後方で機関銃の銃声が轟く。もう一度振り返ると、逃げた難民たちは、M551上部の機関銃の前に、何人も倒れ始めていた。
「いけません中佐、彼等は・・・!」
もう一度、すぐ後ろで別の機関銃の銃声が轟く。
「ヘイズ、止めろ!」
機関銃を撃つヘイズの耳には届かない。それを見たクルーエルが止めようとするが、ヘイズに蹴りを食らい、その場に倒れた。
「クソ野郎!」
後ろからジョンがヘイズの腕をひねり上げ、機関銃はようやく止まった。
M551による一斉掃討が済んだ後、バリーのSOGがスヌールの町に入った。機関銃の掃射によって死んだ難民達の死体を、M551が踏み潰しながら、第2中隊も後に続く。

「貴様、命令違反だぞ!」
バリーはハルバーリンの後方に燃え盛るスヌールの町並みと、3機のM551の前に並んでいる難民達に視線をずらした。彼らと、バリーのSOGは第2中隊に銃を向けられている。
「中佐、何度も言っている通り、彼らには“殺気”がありません。彼等はただの難民・・・」
ハルバーリンの鉄拳が、バリーの顔を殴り飛ばした。
「奴らは、我々を狙う“ベトコン”だ!」
バリーはハルバーリンを見据える。
「いいえ。彼等は“ただ”の難民です」
ハルバーリンは、自分に従わないバリーの襟首を掴みあげた。
「“敵前逃亡”で貴様のSOGは、全員射殺となってもいいのか?」
ハルバーリンはバリーの耳元で、続けて何かを囁いた。その声は、ジョン、ヘイズ、クルーエルには届かない。
ハルバーリンがM16をバリーに手渡す。バリーは冷徹な表情を浮かべた。
「バリー、何をする気だ!?」
ジョンが叫ぶが、バリーは何も応えなかった。バリーはスヌールの町に住んでいた“難民”の男の前に立つと、彼に銃口を向けた。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114