タイニンの北東にある海兵隊駐屯地(マリーンズ・ファイアベース)に到着し、バリーは第12装甲騎兵連隊の隊長である、モートン・ハルバーリン中佐の下へ向かった。既に中隊は到着しており、ファイアベース内に、今回の侵攻作戦で使用される、水陸両用である空挺戦車M551が3機投入されていた。68年の“テト攻勢”で始まった北ベトナム軍は、当初アメリカが予想しなかった戦車を投入し、その後の攻勢も北ベトナム軍は戦車を積極的に投入していたのにもかかわらず、アメリカは戦車の実戦配備をしなかった。 今回ようやく、戦車を持った部隊・装甲騎兵が動いたのだ。 バリーは作戦本部(HQ)のテントに入ると、二本のラインが入ったファティーグの男に敬礼をする。 「タウバー中尉、只今到着いたしました!」 その男・モートン・ハルバーリンが振り返る。 「君が、MACV-SOGのタウバーだな」 「は!」 バリーはカンボジア侵攻の為のブリーフィングを受けた。基地地域353「サカナの釣り針地区」から入り、さらにスヌールという小さな町へ、そこから北上していくというものだった。COSVN(南ベトナム中央局)の索敵・破壊。 「奴らは民間人に潜伏しているという情報も得ている。君たちは、北ベトナム軍の索敵に努めてくれ」 バリーは再度敬礼すると、HQを後にした。 翌日、バリーのSOGを含めた装甲騎兵連隊第2中隊は、ファイアベースを出発する。先頭を、バリーが運転するジープが走っていた。 前回赴いたときは、LZから基地地域353までは半日の行程だったが、今回はものの数時間で現場に到着した。そして、本来のCOSVNが存在していた地点を通る。ジャングルの木々に覆われていたはずだったが、「メニュー作戦」の空爆により、完全な焼け野原になっていた。地下に伸びていたCOSVNの本部も、空爆によって出来た数十個のクレーターが出来ており、その面影すらも残っていなかった。 一行は更に北上した。焼け野原から、次第にジャングルの木々が現われ始めたとき、バリーのジープは、何者かに狙撃された。 「どうした!?」 ジープの無線から、後方を走る第2中隊のハルバーリンが叫んだ。 「何者かに攻撃を受けた!今から追撃する!」 バリーが応える。 「追撃は、しなくていい!」 ハルバーリンの声に、バリーは耳を疑う。 「この先のスヌールへの爆撃要請をする。そこで待機しろ!」 そう言うと、ハルバーリンは航空機への爆撃支援を要請した。目標地点はスヌール。 「何、考えてんだ!敵が逃げるぞ!」 ジョンが叫ぶ。だがバリーはSOGのメンバーを止めた。爆撃に巻き込まれる可能性があるからだった。 空爆は、そこから24時間にも及んだ。バリーのジープは後方を走っていた装甲騎兵のM551と合流する。 「90mm戦車砲を用意させた。それを町に食らわせてから、侵攻する」 M551の後ろを走っていた、ジープのハルバーリンが言う。 「腰抜けめ!」バリーは、そう思いながらハルバーリンを睨んだ。完全に、町を爆撃の火で“浄化”させて安全になってから入るというのだ。 「そこまでする必要があるのか?」 ジョンが言う。 「追撃しなけりゃ、俺たちを撃った奴は逃げちまう」 クルーエルが、バリーの顔を見る。バリーは首を横に振り、チームに応えた。 「所詮は、ウェスト・ポイント上がりのエリートなのさ」 バリーはハルバーリンを「現場を知らぬ間抜けども」と嘲笑った。
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