「貴方とリトル・アンのお父様が、もう帰ってくる頃なのね」 バリーが俯きながら、頷いた。ロレーナは二人を家に近くまで送ろうと言ったが、それはジョージに制止され、結局、彼女は息子のジョージだけを乗せ、家路に着いた。赤いピックアップが見えなくなるまで、アンは手を振っていた。ふと気付くと、自転車を押したバリーが遥かに先を行っている。彼女は急いでバリーに駆け寄るが、バリーは全く振り返ろうとしなかった。 「ねぇ、まだ怒ってるの?」 それでも振り返ろうとしないバリー。アンは彼の前に回り込み、もう一度同じ事を訊ねた。 「ねぇ、バリー」 「まだ怒ってるよ!」 「パパの言い付けを守らないから?」 「そうだよ」 「私が邪魔したから?」 一瞬、バリーは言葉に詰まった。立ち止まり、アンを見た。彼女は俯いたまま、バリーの次の言葉を待っているかのようだった。 「ああ、そうだよ!お前が邪魔ばかりするからだ!」 そう言った後、アンは大粒の涙を流し始めた。 「ごめんなさい、ごめんなさい」 何度もアンはバリーに許しを乞うた。 ジョージがこの街に来て以来、二人はこのような喧嘩が絶えなくなっていった。何故か、バリーは彼女に辛く当たる事が多くなっていた。そして、その後に必ず酷い自己嫌悪が彼を襲っていた。 バリーは家に帰るまで、泣きじゃくるアンと口を聞かなかった。夕食を摂り、夕方には帰る筈だった両親が帰るまで、バリーは独りベッドに蹲り、酷い言葉でアンを傷付けた事に、胸が張り裂けそうな想いに必死で絶えようとしていた。 何故、アンをそこまで傷付けるのだろう。何故、彼女を憎もうとするのだろう。 ベッドから立ち上がり、隣にあるアンの部屋のドアをノックした。中から何も返事が返らなかったが、彼女の気配を感じ取ったバリーは、ドア越しに語りかけた。 「アン、今日はごめんよ。そんなつもりじゃなかったんだ」 それだけを告げると、肩を深く落としながらバリーは自分の部屋に戻っていった。
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