その日の夜、バリーはウィルキンソンへの報告を済ませ、自分のテントへ戻る途中、ジョン・マッキンタイアを見かけた。彼は静まり返った基地で、バンカーの屋根に登り、夜空を眺めている。バリーは補給部へ行き、冷えたビールのパックを掴むと、ジョンの下へ向かった。 「おい!」 バリーが声をかける。それに気付いたジョンが、下にいるバリーを見た。 「飲むか?」 バリーはビールを見せる。ジョンは手を差し出した。バリーは屋根に居るジョンに、ビールを投げた。
二人はバンカーの屋根の上で、話を始めた。何故、NFLのスタープレーヤーがベトナムに居るのか、バリーはジョンに尋ねた。 「あんたなら、徴兵は免除の筈だ。だが、LRPへ来たということは、志願したのか?」 ジョンは小さく頷き、ビールに視線を落とした。 「故郷の友達や家族が、みんな“ナム”へ刈り出されたんだ。俺一人、安穏な生活をするわけにはいかない」 ジョンの出身はアイダホだった。まだ黒人差別の激しい中であったが、突出した身体能力を活かし、スタンフォード大学への切符を手にする。 バリーはジョンと話すうち、彼の選手としての能力も認めていたが、それよりも彼が想像以上に知的で、頭の切れる男だということが分かった。また彼は家族や友達を愛し、敬虔なクリスチャンでもある、正義感の強い男だった。 「そうだ、カンファレンスは違うが、イェール大のジョージ・スピラーンを知ってるか?」 バリーが、笑みを浮かべて話した。 「ああ。一度、練習試合で対戦したことがある。彼もクォーターバックだった」 ジョンは、そのときの試合をバリーに話した。 「スピラーンは手強かった。あいつのせいで、なかなか点が入らなかったんだ」 バリーは、それを誇らしげに聞いていた。ジョンは、何故スピラーンの話をするのかバリーに尋ねる。バリーは財布から、ウエディングドレスを着たアンジェリアと、その隣に写っているジョージの写真を見せた。 「ジョージは幼馴染で、親友だ。それで、俺の妹と結婚したんだ」 「綺麗な妹だな。君に全然似てない」 嬉しそうに話すバリーに、ジョンも気を許す。二人は笑い合った。 「ここに来て、気の合う奴に出会うとはな」 「あんたと、こうやって話が出来るなんて、思ってもみなかったよ」 バリーは、それからMACVでの決定事項である、ジョンが自分のチームに入ることを告げた。 「君のチームで良かった」 ジョンは、バリーに手を差し出す。バリーはそれに応え、握手を交わした。
4月28日 アメリカはカンボジア侵攻作戦を開始する。 バリーのSOGは、新たな任務に就いた。
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