20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:サイレンス 作者:ぴきにん

第112回   112
その言葉に、スネップは驚愕した。今回の任務は、AAA(トリプルA)の刻印が押された、機密任務なのだ。ラングレーでも、権限のあるものしか閲覧が出来ない任務のはずだった。だが、目の前にいる男は、いとも簡単にその任務内容を言ったのだ。
「彼を置いていきます。貴方の護衛と身の回りの世話をしますよ」
そう言うと、バリーは部屋を出た。ドアを閉め、エレベーターの前でデボアのケースオフィサーにバリーが囁く。
「奴が部屋を出たら、“あからさま”に尾行を付けろ」
バリーとホアはエレベーターに乗り込み、階下へ向かう。VIP専用通路に降りると、エレベーターの前で、スーツに身を包んだモビーディックが二人を待っていた。
「うまくいったようだな」
バリーはそのまま外に向かい、車に乗り込む。ホアとモビーディックも後に続いた。
「奴は“アナリスト”としては有能なようだが、“ネゴシエーター”としては、無能なようだ」
バリーは胸ポケットからラッキーストライクを取り出すと、一本口にくわえ、待ち構えたように火を点けた。
「そんな男は、“追い詰める”のが一番良い・・・」
バリーの言葉を聞き、モビーディックは笑みを浮かべる。

部屋に取り残されたスネップは我に返ると、電話の受話器を手に取り、送話器の蓋を外す。その中から、小さな送信機が設置されているのを見つけた。“盗聴器”である。慌てたスネップは、テーブルの下、ベッドの下、コンセント、あらゆる場所を捜した。全ての場所に盗聴器がしかけられていた。
スネップはファティーグを脱ぎ捨て、クローゼットの中にあったスーツに着替える。全身から冷たい汗が流れ落ちた。スネップは、任務の護衛にバリーを選んだことを後悔していた。“利用する”どころか、逆に“利用されている”ことに気付いたのだ。
スネップはドアを開けて外に出ようとした。しかし、そこにはバリーが置いていったデボアの男が立っている。
「外へ出る」
スネップが言う。
「どうぞ」
ケースオフィサーの男は彼に道を譲る。スネップは慌ててエレベーターへ乗り込み、階下へ降りた。
ホテルを足早に出ると、夜になったプノンペン市街に向かった。アメリカ大使館へ行き、任務を立て直さなければならない。しかし、スネップは自分を尾行している男たちに気付いた。彼は何度か尾行を巻こうとしたが、“彼等”は執拗にスネップを尾け回した。
人の気配が無くなった市場の中に入ると、スネップは積み上げられた木箱の影に隠れた。その直後、彼を尾行していた男たちが通り過ぎる。彼等が行ったのを確認すると、ゆっくり外に出た。立ち上がって通りに出ようとした瞬間、スネップの肩を誰かが叩いた。
「街は危険です。貴方は此処に“存在”してはならないのですから」
振り返ると、デボアのケースオフィサーが立っていた。
ホテルに連れ戻され、部屋に入ると、テーブルの上にあった電話が鳴り始めた。スネップは恐る恐る受話器を取る。
「慌てる必要はありませんよ」
バリーの声だった。
「やはり、私を消すつもりか?」
「貴方には、任務を遂行していただきたいだけです」
「では、お前の望みは何だ?」
スネップの声が震えだした。
「カンボジアは、これから必ず武器を必要とするでしょう」
それに反して、バリーの声は穏やかだった。
「カンボジアに対しての、武器販売の独占・・・。それが、僕の望みです」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 1114