任務の直前、ファティーグを来たスネップはバリーの姿を見ると、口元に笑みを浮かべながら握手を求めてきた。 「やはり、私の感は当たっていたようだ」 バリーも煙草をくわえながら、それに応える。 「君が、“デボア”の後継者候補だったとは」 バリーは、サングラスをかけているスネップの、瞳の奥を覗き見る。 「また、貴方に会えて光栄です」 バリーがそう言うと、スネップは笑った。 「お互いに、利害が一致したようだな。だから、私に近付いたんだろ?」 「貴方の任務が成功するように、全面協力しますよ」 スネップは笑っていた。彼は、欲の塊のような男だった。今回の任務で自分の名を上げ、一気に上層部に食い込もうという腹だ。こんな男ほど、御し易いものは無い。 バリーも、彼の瞳を覗き込んだまま、笑みを浮かべた。
SOGのメンバーは、今回の任務では最小人数だった。デイル・スネップとバリーのみである。ダレン・ヘイズは、この任務を外されていた。これによって、CIAの内部にも“デボア”のスリーパーが存在しているのは明白だと、ガーツは考えていた。
ルートは、サイゴンの西北・タイニンからカンボジアの国境を抜け、基地地域“聖域”を通り、カンボジアの首都・プノンペンに入る予定だった。このようなルートを通るのには、訳があった。“非公式”で、ある人物と会う為である。その為、空路は使えなかった。スネップはサイゴンで会ったバリーを、コントラクト・エージェントとして雇う腹積もりだったが、彼の正体を知り、逆に利用しようと考えたのだ。 「私を、殺すつもりはないだろう?」 スネップはバリーに言った。 「貴方を消すのなら、ずっと前に殺ってましたよ。言ってるじゃありませんか。“全面協力をする”と」 LZに向かうヒューイの中で、バリーは不敵な笑みを浮かべた。 「“見返り”は何が欲しいんだ?」 スネップが言う。 「現地に着いたら、話しますよ」 バリーの言葉に、スネップは感心していた。 「やはり、君はベトナムで納まるような男じゃないようだ」
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